『逆説の日本史』で知られる作家・井沢元彦氏は、20年以上前の著作『恨の法廷』で「韓国の反日の根底には『恨』の感情がある」と綴った。韓国は日本の歴史教育が偏向していると指摘するが、果たして偏向しているのは日本と韓国のどちらなのか? 井沢氏はこう解説する。
* * *
韓国はいま、日中韓の共同歴史教科書を作るよう画策している。日本の歴史教育が自国に有利なように偏向している、と考えているからだ。こうした「教科書問題」の発端となったのは、1982年に起こった「教科書誤報事件」だった。
この年6月、日本の大手マスコミは、「文部省(現文科省)が、高等学校用の日本史教科書の検定において、中国華北への『侵略』を『進出』と書き改めさせた」と報じた。中韓両国が抗議したが、実際には記述の変更はなく、誤報であることが判明する。しかし、騒動をきっかけに、のちに教科書の記述においては近隣諸国に配慮する「近隣諸国条項」が生まれた。
『恨の法廷』でも、日韓の教科書どちらが本当に偏向しているのかが論じられる。このテーマについて日本側に立って論じるのは、日本に在住し、日韓双方の事情を知る韓国人という設定だ。
〈それ(侵略を進出と書き換えたという報道)はほとんどが誤解なのよ。日本の新聞が書き立てたので、それっとばかりに韓国の新聞記者が追随しただけなの。あの時、日本の教科書の実物を手に入れて、ちゃんと確認して批判した新聞社はなかったし、韓国の新聞社がこぞって、日本の或る学者を教科書問題で日本政府を糾弾する英雄として持ち上げた〉
〈韓国のマスコミに自主性がないからです。少なくとも反日キャンペーンについては、感情的に騒ぎ立てることしか考えていません。それに、その方が一般受けして新聞もよく売れるし〉
〈一社ぐらい、日本の教科書の記述と、韓国の教科書の記述と、どちらが独善的か比べてみるという発想があってもよかったと思います。でも、韓国人はそういうことはできないんです〉
〈(なぜなら)極めて尊大で独善的だから。特に、同国人として一番嫌なことは、何でも他人のせいにするということです。韓国人は絶対に自分の責任を認めません〉
※週刊ポスト2013年12月20・27日号