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特定秘密保護法反対も言葉尻だけで思想弾圧と批判賛同できず

 臨時国会は12月6日が会期末だった。このコラムが読者の目に触れるころ、特定秘密保護法案は成立している可能性が高い。

 会期が延長されたり来年の通常国会へ継続審議になっていれば話は別だが、法案が成立した前提で何が問題だったか、あらためて考えてみよう。まず、積み残した重要案件がある。それは秘密の指定と解除について監査する「独立した機関」の制度設計がどうなるか、だ。

 法案は附則第9条で独立機関の設置と必要な方策について「検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」と定めている。だが具体策となると、とても参院での1週間やそこらでまとまるわけがない。

 これまで日本政府は核の持ち込みでも沖縄密約問題でも、ずっと情報を隠してきた。だから、国民は政府を信頼できず、独立した機関に秘密のチェックや解除を委ねたいと思っている。

 本来は、ここが一番肝心だったはずだ。ところが政府は秘密の指定ばかりに熱心で、解除策や信頼性確保についての問題意識がすっぽり抜け落ちていた。それではダメだ。仮に法案を強行採決で成立させたとしても、国民の疑問は消えないだろう。ほうっておけば、政府への信頼を損なうだけだ。

 一方で、反対派についても一言言いたい。今回の法案が「市民の思想チェックを狙っている」といった議論がある。はっきり言って、これは行き過ぎではないか。

 法案には、たしかに「特定有害活動及びテロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し……)」という文言があった。だが、それは「そんな主義主張を弾圧する」という趣旨の条文ではない。

 そうではなく「秘密を扱う人間がテロ活動に関わっていないか適性評価する」という条文である。当たり前ではないか。テロの関係者が秘密を扱ったら大変な事態だ。

 条文の趣旨と関係なく言葉尻だけをとらえて、あたかも「思想弾圧だ」といった調子で批判するのは賛成できない。そんな批判は左翼の世界では受け入れられても、政府や官僚は痛くも痒くもないだろう。法案の具体的な見直しにもつながらない。

 誤解してほしくないが、私も今回の法案に反対である。それは安全保障上の秘密保持と国民への情報公開という相反する課題について、法案が出した答えのバランスがいかにも悪いからだ。法案は成立したとしても生煮えだ。賛成派も反対派も議論を重ねる必要がある。

(文中敬称略)

文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2013年12月13日号

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