どんな夫婦にも順風があれば逆風もある。それをおしどりといわれる有名人夫婦たちはどう乗り越え、「円満」にたどりついたのか──。
【湯原昌幸(66才)&荒木由美子(53才)夫妻】
インタビュー中、どちらかが話しているとき、もうひとりは満面の笑みで見つめる。そんなふたりの30年間の道のりは決して平坦なものではなかった。湯原が語る。
「妻はアイドルとして、さあこれからってときに13才も年の離れた“ババ付き”のぼくのとこに嫁いでくれた。由美子は古風で負けず嫌いな性格。愚痴をこぼしたり暗い顔なんかしないんだけど、さすがにおふくろの介護と育児が重なった時期は、心も体も限界状態だったと思う。
数時間おきの授乳に加え、認知症の進行で徘徊までするようになったおふくろを心配して、ソファで手を繋いで眠ることもしょっちゅう。階段で仮眠を取っていたこともありましたから」
かたわらの妻がこの時期のことを話す。
「湯原さんは徹底して私の味方になってくれました。認知症が進行して義母は“ご飯を食べさせてもらってない”といって、毎日のようにお総菜を買ってくる。それを帰宅した湯原さんに差し出し“一緒に食べよう”と。
もちろんそれには手をつけず“せっかく由美子が作ってくれてるんだから”と義母を叱り、私をかばうんです。そうすると私も義母がかわいそうになって結果的に家の中がうまくいく」
介護のさなか、ふたりが膝をつめて話したことがあったと夫は言う。
「由美子は大変なことをぼくに悟られまいと努めて明るく振る舞おうとしていました。けど、言葉の端ばしにケンがある。そのとき、ぼくは“腹芸はやめろよ”と言ったんです。愛する人から本音を打ち明けられないなんて、そんな寂しいことはないと。それから、正直にいろんなことを話すようになりましたね」
母親の介護に明け暮れた20年の間には仕事に恵まれない時期もあった。
「50才のとき、“もう一度、歌いたい。アルバムを出したいから銀行から借金をしたい”とぼくが言うと、周りは猛反対。でも彼女だけは“いいんじゃない”と背中を押してくれました。結果的にそれがきっかけで2004年には『冬桜』で日本有線大賞有線音楽優秀賞を受賞しました」
そうそう、そんなこともあったわねと、妻はうなずいたり夫に顔を近づけたり。その妻を愛おしそうに夫は見つめる。
※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号