愛車の中でリラックスする上原浩治
米大リーグ・ボストン・レッドソックスのワールドシリーズ制覇の立役者となった上原浩治(38)。シーズン中はどんな生活を送っていたのか、スポーツライター・佐々木亨氏が、米ボルチモアで上原に聞いた。
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ビジターでの試合では、球場に用意されている晩飯をプラスチックの容器に詰め込み、ホテルに持ち帰ってひとりで食べる。
「球場で食べる時もありますが、だいたいはホテルに持ち帰って部屋で食べますね」
英語が飛び交うテレビの前でただひとり、わずかに冷えた晩飯と350ミリリットルの缶ビールを胃袋に流し込む。ビールは毎晩、2本と決めていた。上原が冗談めかしていう。
「8月ぐらいまでは2本だったんです。でも、だんだんストレスが溜まってきたのか、シーズン終盤からは3本になりました」
ひとりだけのホテルの空間。会話のない食事。やはり孤独感はあるようだ。
「そりゃあ、寂しいですよ。その場で料理を作ってもらって食べるわけでもないですし。たとえば、居酒屋に行ってひとりで食べるご飯のほうが、よっぽど美味しいと思いますよ。あったかいモノを食べられるわけですし」
仕事終わりに行きつけの居酒屋を目指す。暖簾をくぐり、カウンター越しに座る。そして、女将に「とりあえず、ビール」。そういいながら、おつまみのひとつでも出してもらう。
「そういうことがしたいんですよ。夜の居酒屋。俺も行きたいなあ」
上原のちょっとした夢だ。それでも、シーズン中の上原は孤高の道を選ぶ。なかには試合後に仲間と一緒に外食する選手もいるというが、その輪に加わることはない。
「僕の場合は治療とかがあるので、(外食などに)行っている暇がないんです。行きたい気持ちもありますけど、治療を疎かにして、次の日にケガをするのが嫌なので」
プロとしての自覚、そして極限の戦いに身を置く男の生き様が、その言葉に滲む。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2013年12月20・27日号