中国が11月23日に突然行なった防空識別圏の設定が、中国の尖閣諸島の領有を主張するための工作であることはいうまでもない。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏の話。
「中国は確実に尖閣諸島を獲りにきている。防空識別圏の設定で“外堀”を埋めておいて、次に中国が狙うのは、日本が実効支配している尖閣の半径22キロメートルの領空を“中国の領空”として主張し始めることでしょう。現在は中国軍もその領空には無人機しか飛ばしていないが、防空識別圏を設定したことで、近い将来、戦闘機が領空侵犯してくる可能性は高い。
その時の自衛隊の対応がキーになります。あくまで戦闘行為も辞さない覚悟で断固とした対応ができればいいですが、それを一度でも放置してしまえば、この領空がなし崩し的に中国の領空となってしまう。そこに日本の民間機が侵入したら、中国の言い分からすれば、理論上“撃ち落とせる”ことになる。その先に待っているのは、尖閣諸島への上陸、そして実効支配です」
その強硬策の準備を中国は具体的に進めている。昨年、福建省寧徳市に空軍基地となる水門飛行場を建設。尖閣諸島から380キロメートルしか離れていないここが、尖閣有事の最前線基地となる。
「中国の戦闘機J-11なら12分で到着できる距離です。間違いなく尖閣諸島を意識して作っています。もし尖閣周辺の防空識別圏に不審な航空機が侵入すれば、ここで監視し、威嚇するならばここから戦闘機が飛び立つことになる。
現在、尖閣の半径22キロメートルの領空を飛んでいる有人飛行機は自衛隊機だけではありません。NHKや共同通信などの報道機関の飛行機も飛んでいる。近い将来、“中国軍に日本の報道機が撃墜された”というニュースが出ないとも限りません」(黒井氏)
中国は尖閣諸島の実効支配に本腰を入れ始めた。そんな火種が燻る中、中国の通達を無視した日本の民間機が無事に通れる保証は、本当にあるのだろうか。
※週刊ポスト2013年12月20・27日号