1968年11月29日発売の『ビッグコミック新年号』に第1話が掲載されて以来、『ゴルゴ13』は一度も休載せずに連載45周年を達成した。著者のさいとう・たかを氏にジャーナリストの角山祥道氏がインタビューした。
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──連載開始から45周年、多くの読者が『ゴルゴ13』を通じて激動する世界情勢を垣間見てきました。
さいとう:東西冷戦が終わった1980年代末頃、「ゴルゴはネタがなくなって終わるんじゃないか」と散々聞かれましたが、そのたびに、「まったく逆です」と答えてきました。冷戦時代の世界には米ソ対立を軸に暗黙のルール、了解があった。それが取り払われたら宗教、民族、エネルギー、食糧などあらゆる問題が噴出してくる……そこにドラマがなくなることはないと思ったのです。
ただ正直な話、ここまで続くとは思いませんでした。連載当初は10回で終わるつもりでしたし、最終回も構想していたほどですから。それが読者の支持のおかげで、ここまで続けてこられました。
──サイバーテロ、ハッカー、近年ではリーマン・ショックなどがモチーフになっています。なぜ『ゴルゴ13』は現実の国際情勢を描いているのか。
さいとう:ゴルゴ13というキャラクターがあまりにも荒唐無稽な存在だから、物語のバックに現実の世界情勢を取り入れることでリアルに見せようとした。その時に大事にしているのは、その時代の善悪の基準で描かないということ。正義と悪を隔てる基準は、時代の都合や国の都合で変わります。歴史や善悪の基準はその時の勝者、強者が作るもので、絶対的な基準ではないですよね。
では何をもって判断するのか。それは「原点」です。物事を原点に返って考えると、見えてくるものがある。
今から50年も前に、私は「共産主義は50年もたない」と予言した。国家が発展しつつある時期なら平等主義はいいかもしれないが、安定すると、必ず「いい目を見よう」と思う人間が出てくる。平等主義でいい目を見るには権力を握るしかない。共産主義は原理的に独裁者を生むと考えたのです。歴史が教える通り、独裁国家は決して長続きしない。
──『ゴルゴ13』の今後は?
さいとう:この作品は、自分という人間の集大成。描くことができる限り、待ってくれている読者のためにも『ゴルゴ13』を描き続けていきます。
※SAPIO2014年1月号