60代男性がこんな涙ぐましい体験を語る。「公衆トイレで用を済ませ、チャックを閉じてから、おしっこがポタッとズボンにつくことが時々ある。そんな時は染み出したのがわからないように、手を洗った後、わざと拭かずにパッパッとズボンで払い、水滴のシミをつけて誤魔化して……。ホント、情けないですよ」──。
特に冬は汗をあまりかかないのでトイレが近くなりやすいうえ、年末年始の旅行などで長期間出かける機会も多い。失禁や尿漏れの心配の度合いが増す時期だ。
排泄ケア商品の開発販売会社ニシキの排泄ケア相談担当を務める長谷川裕一氏によれば、50歳以上の男性の3~4割は「ちょろっと漏れ」の経験者だという。
「尿漏れは女性特有の悩みと思われがちですが、必ずしもそうではない。ちょろっとという感じの尿漏れは男性にも頻繁に起きていて、ズボンにまで染み出すこともあります」(長谷川氏)
女性の場合、尿道が3~4センチと短く、骨盤底筋の筋肉量が少ないため、もともと尿道を締める力が弱い構造になっている。そのため、出産や加齢によって尿漏れをしやすく、中高年女性の多くが悩みを抱えている。
一方、男性の尿漏れの多くは、筋力低下と前立腺の肥大が原因だ。男性の尿道の長さは約20センチ。前立腺はその途中にある、精液の一部を作っている男性にしかない臓器だ。
「前立腺はクルミほどの大きさですが、加齢とともに大きく膨らんでいく。これが病的な状態になったものが前立腺肥大で、膀胱や尿道が圧迫されることにより、尿が出にくい、尿漏れ、頻尿といった尿関係のトラブルの原因になる。現在では50歳以上の3~4人に1人は前立腺が肥大しているといわれています」(長谷川氏)
さらに80歳以上になると、日本人男性の実に80%が前立腺肥大症になるという。