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ケネディ暗殺犯 海兵隊からソ連亡命CIA職員など半生たどる

 1963年11月22日、テキサス州ダラスでのパレード中に第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディが暗殺されてからちょうど50年が過ぎた。『二〇世紀最大の謀略─ケネディ暗殺の真実─』『ケネディからの伝言』(いずれも小学館文庫)の2冊を上梓した落合信彦氏が、暗殺から約1時間後に逮捕された、ソ連に亡命経験をもつ元海兵隊員、リー・ハーベイ・オズワルドとは何者なのかについて解説する。

 * * *
 オズワルドは1956年に17歳で海兵隊に入隊後、日本の厚木基地に赴任し、その時にロシア語を覚え、レーダー技術を学んだ。IQも117と平均的なアメリカ人よりは高い。しかし、射撃の腕にかけては素人に近い。

 CIAは常にオズワルドのような人材を探している。孤独で友人もなく、社会性に欠け、何らかの不満を持っている。こういう人物はCIAにとって非常に使いやすい。どんなミッションでも、国家のためとなれば疑問を持たずに上からの指示を遂行するからだ。大組織のコマとして使うには、もってこいの人物なのである。

 1959年、20歳の時にオズワルドはソ連に亡命する。翌年にアメリカのU─2偵察機がソ連に撃墜される事件が起きたが、これはオズワルドが漏らした情報が原因だとされる(厚木はU─2の作戦基地だった)。つまり本来であれば、許されないスパイ行為だ。当時、アメリカの大統領はアイゼンハウワー、ソ連の首相はフルシチョフ。冷戦が進行していた。

 だが、アイゼンハウワーとフルシチョフの関係が改善しつつあり、パリで首脳会談が行なわれることになった。緊張をキープし続けるのがCIAや軍部のメリットである。彼らは当然雪解け外交に反対した。ここで、CIAは3年前から訓練をし続けてきたオズワルドを登場させる。

 その後、アメリカの偵察機U─2がソ連のミサイルに撃墜される。フルシチョフは激高し、パリの首脳会談はキャンセルされてしまう。CIAや軍部はホッとしたに違いない。

 1962年にオズワルドはのうのうとアメリカに戻ってきた(しかもソ連で結婚した妻を伴って)。CIAやFBIが彼を取り調べたり、締め上げたりした形跡はない。冷戦下では異例のことだが、CIAがオズワルドをよく知っていた(エージェントとしてソ連に送り込んでいた)と考えれば不自然ではない。

 結論を先に言うとダラスに戻ったオズワルドはFBI支局でインフォーマーとして働き、翌年再びCIAのもとで働き始めたとみられている。パッツィ(囮)として使われているとはオズワルド自身、夢にも思わなかっただろう。

※SAPIO2014年1月号

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