どんな夫婦にも順風があれば逆風もある。それをおしどりといわれる有名人夫婦たちはどう乗り越え、「円満」にたどりついたのか──。
【大村崑(82才)・瑤子(76才)夫妻】
出会って8か月で始まった結婚生活。最初から順風満帆というわけではなかった。
「当時は相撲部屋並みに家族がいっぱいいて、いきなり妻はそこの主婦でしたから。お手伝いさんはいるけど仕切りは彼女。大変でしたよ。考えてみたら、夫婦の会話が全然なかったんですね」(大村)
10年後に事件は起こる。長男が小学4年生、次男がまだ幼稚園の頃だった。瑤子さんは家出する。置き手紙ならぬ「このテープを子供に聴かせてください」という1本のテープだけがテーブルの上にあった。夫は人気絶頂で仕事は休めない。誰にでも相談できる問題ではなく、ひとり悩み苦しんでいた。そのときのことを瑤子さんはこう話す。
「私、本当にもう家に帰るつもりはなくて。言えば病気みたいなもんですね。ストレスがたまってたまって。それが爆発してしまったんです。それで、米軍の仕事をしていた父の知人で、ハリウッドに行った人で、“瑤子、遊びに来いよ”なんてことよく言ってくれていたおじいちゃんがいて、その人を頼ってアメリカへ飛んだんです。アメリカで何して過ごすか、着いてから考えようと…」
もちろん夫も、妻の実家も大騒ぎだった。紆余曲折のあげく、妻を迎えにみんなで東京の空港へ向かった。
「忘れもしません。バッファローのこんな大きなぬいぐるみで顔を隠しながら、彼女が出てきたんですよ。彼女の希望でふたりきりでホテルで話をしたら“会話がない夫婦は耐えられない”と言う。それで“わかった”と。それからはぼくは改心しまして」(大村)
その後、夫の変わりようといったらなかった。
「ぼくは当時、忙しかったから大勢の人に囲まれて、何でもかんでも他人にやってもらってました。でも、それから一切やめた。自分でお茶もいれるし、洗濯もしました。かなりうまいですよ。洗濯物を乾かして、アイロンをかけて引き出しにしまったら、不思議な達成感があるんですね。主婦がやってるのは、これかとね」
あれから40年の月日が流れても、夫の頭の片隅には、もし何かあれば「また出て行くんちゃうかな」という思いが残っているという。
「まさか。今は夫がいなくなってしまうことを考えただけでも泣きたくなります」
※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号