彦根城に住む「ひこにゃん」、熊本から世界を飛び回る「くまモン」、喋らないタブーを破った梨の妖精「ふなっしー」など国民的アイドルと呼んでもよいご当地キャラクターたち。「ゆるキャラグランプリ2013」には2日間で来場者が45万人が集まる人気ぶりだが、以前とは異なるタイプのファンが増えてきたという。「ビジュアル系バンドやジャニーズ、韓流などのファンだった人が、ゆるキャラファンになっているんです」と指摘するのはキャラクター研究家の犬山秋彦さんだ。
彼女たちは、以前のゆるキャラファンと動き方が違うのが特徴なのだという。
「もともとゆるキャラファンの多くは遠くから眺めたり、ツーショット写真を撮って満足するようなおとなしい人たちが主流でした。でも、『ひこにゃん』や『くまもん』の人気に火がつき、今のようなブームになってから流入したファンは積極的です。どんどんキャラクターに近づいて触ろうとしますし、最前列で写真を撮るためにイベント開始前から行列を作ったりします。また、キャラクターたちのTwitterのフォロワーにはジャニーズや韓流アイドルの写真が使われている割合が増えた気がします」(犬山さん)
まだ知名度が高くなかった頃、「ひこにゃん」が滋賀県の観光イベントで新宿駅にやってきたことがあった。そのときは観光協会の人が「写真をどうぞ!」と呼びかけても、にこにこしながら少し離れた所から携帯を向け「かわいい!」と写真を撮る人ばかり。ところが、その数か月後に有名になった「ひこにゃん」が登場すると、我先にと詰めかける人たちに観光協会の人が「並んでください」と呼びかけるようになっていた。
ゆるキャラファンの行動が、より積極的に変化しているのは事実だ。それにしても、韓流ファンがなぜ、ゆるキャラへと興味の対象を広げているのか。
「ゆるキャラはTwitterで言葉を投げかけるとリプライを返してくれたり、Facebookでもコメントに返事をくれたりと直接、やりとりができる有名人です。さらにイベントでは気軽に触ったり、一緒に写真を撮ることもできます。芸能人を追いかけても満たされない部分、少しでも近くで感じたいというファン心理を満足させてくれる存在が『ゆるキャラ』なのです」(前出・犬山さん)
いまやゆるキャラの数は全国で3000を超え、キャラクターのタイプも多様化した。それに伴って韓流ファンだけでなく、さまざまな芸能人のファンがゆるキャラファンへ流入しているという。
「アカウント閉鎖事件を起こすなどTwitterでの自由奔放な発言で知られた北海道長万部町の『まんべくん』は、ゴールデンボンバーのファンだと公言していたこともあり、ビジュアル系バンドの熱心なファンたち、バンギャルが『まんべくん』ファンにもなっていました。
また、ふなっしーブーム以降、そこを入り口にご当地キャラへ興味を持ち、他のゆるキャラのTwitterをフォローしたり出演イベントを追いかけて写真を撮るようになった人たちには、ジャニーズのアイドルファンが多い印象ですね」(前出・犬山さん)
イベントにテレビ出演、CDデビューなど活躍の場がどんどん広がったゆるキャラ人気は当分のあいだ続きそうだ。くれぐれも、ファンの行動が過激化してファンとの「ゆるい」コミュニケーションがとれないような、遠い存在にならないことを祈るばかりだ。