マンション一室を購入し、賃貸に出せば安定した家賃収入も得られる「マンション投資」。ある業者によると、「最近は可処分所得の多いサラリーマンのみならず、年収400万円前後のOLや若い20代など、男女の別や年齢に関係なく始めている」というから驚きだ。
確かに足元の不動産市況は好調で、マンション購入の好タイミングであることは頷ける。
アベノミクスによる景気の底打ち感が日増しに高まってきたうえに、消費増税前の駆け込み需要で、首都圏のマンション発売戸数は対前年同月比で6か月連続の増加(不動産経済研究所調べ)となっている。
さらに、国土交通省が発表した地価動向報告(10月1日時点)では、首都圏で3か月前より地価が上昇した地区は46あり、実に全調査対象の7割を超えたことが分かった。
また今後も続く東北復興やオリンピック施設の建築ラッシュで職人の数は不足気味のため、建築単価は上がるとみられる。当然、不動産価格の上昇は避けられないだろう。であれば、今のうちに不動産にお金を回して「ひと儲けしたい」と考える人がいても不思議ではない。
しかし、「バブル期のように儲かるから不動産投資をやると考える人は意外に少ない」と話すのは、不動産・相続・税に詳しいファイナンシャルプランナーの芳屋昌治氏だ。
「リーマン・ショック以降、いくら景気回復を実感しても給料減の可能性や老後の年金不安などを持つ人が多い。そのため、儲けは少なくてもいいから着実に資産を増やしておきたいという理由でマンション投資に注目が集まっているのです。不動産は株と違って現物資産で価値がゼロになることもありませんしね」
投機目的が薄れたといっても、マンション投資は「失敗がつきもの」「勧誘に乗せられて価値以上の物件を買わされる」などと、マイナスのイメージを抱いている人も多いのが事実。それは、リスク情報を正確に把握していないために抱く先入観ともいえる。
そこで、前出の芳屋氏にマンション投資で陥りやすいリスクと、最善の回避ポイントを挙げてもらった。
「もっとも大きなリスクは『空室リスク』と『家賃下落リスク』。ローンを組んで購入した場合、毎月の返済額を家賃収入で補えなくなるので、持ち出しが増えることになります。それらを避けるためには、できるだけ人口の多い首都圏エリアの物件で、最寄り駅から徒歩10分圏内の物件を選ぶべきでしょう。
仮に空室になってしまっても、販売会社の中にはサブリースと呼ばれる家賃保証をしてくれる制度があるので、有効に活用すればリスクは解消できます」
また、空室にならなくても、金利上昇に伴うローン返済額がアップする可能性も視野に入れておく必要がある。
「ローンはなるべく早く余裕のある返済をしていくのが基本ですが、金利が上がった場合に返済額がいくらになり、所得でどの程度補えるのかをあらかじめシミュレーションしておくべきです。マンションオーナーになれば、管理費や修繕積立費、固定資産税といった出費もかかるので、それらの増減も考慮すべきです」(芳屋氏)