12月4日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は「和食」の無形文化遺産への登録を決定した。低カロリーで栄養バランスがよい和食は、“ヘルシーフード”として世界的に知られている一方、日本の男性の3割、女性の2割は肥満(BMI25以上 厚生労働省・平成23年国民健康・栄養調査より)というのが現状だ。
高度成長期の1960年代に比べ、日本人の総エネルギー摂取量は減っている。それにもかかわらず肥満が増えていることについて、専門家は「日本人の食生活が変化し、和食離れが進んでいることに原因があるのでは」と指摘する。
12月5日に日本医師会館では、「肥満、生活習慣病の予防・改善と食事処方 ―日本型食生活の意義―」をテーマに、「食育健康サミット2013」が開催された。米穀安定供給確保支援機構の木村良理事長は、「国民1人あたりの米の消費量は、昭和30年代は約120kgだったのに対し、最近では56kg代と半分以下にまで減少しています。そしてそれに反比例するように生活習慣病が増えています」と指摘。
それに続く当日のセッションでは、脂質異常症や糖尿病などを専門とする医師4名が、肥満や糖尿病を予防する食事処方などを取り上げ、その中でごはんを主食とした日本型食生活の意義について、内臓脂肪是正への運動といった、講演やパネルディスカッションを行なった。
その1人、東京慈恵会医科大学内科学講座の宇都宮一典主任教授は、「日本人を含めたアジア人は、残念ながら肥満になりやすい」と、話した。体内の脂肪の面積を見ると、アジア人はそれほど多くはない。しかし比率を見ると、アジア人は小柄な分、他の人種に比べて内臓脂肪の割合が多い。
「内臓脂肪型の肥満になると、膵臓からインスリンがうまく分泌されなくなり、さらにインスリンがうまく働けなくなる。その結果、血糖値が上がり、糖尿病を発症します。糖尿病の最大の問題は、合併症が非常に多いこと。腎症や糖尿病網膜炎、心筋梗塞などが起こり、最悪の場合、命を落としてしまうのです」(宇都宮教授)
また結核予防会新山手病院・生活習慣病センターの宮崎滋センター長は、「肥満は冠動脈疾患、がん、月経異常など、さまざまな病気を同時多発的に引き起こす可能性があります。しかし、肥満を解消すれば、これらの病気の可能性を一網打尽にできるのです。まず、体重の3%を減らすことを目標に、食事療法(ダイエット)や運動に取り組みましょう。体重とともに、内臓脂肪を減らすとさらに効果があります」と話し、次のような食事のポイントを紹介した。
【1】早食いする人には肥満が多い。じっくり時間をかけて噛む食材を取り入れる。
【2】朝食を食べられるよう、夜食はがまんすること。朝食を抜く人には、BMI25以上の人が多い。朝食を食べないと時計遺伝子が作動せず、脂肪を溜めこみやすい体質になる。
「和食は、肥満予防には有効です。和食には魚や野菜を取り入れやすいため、栄養バランスのいい献立となります。食物繊維を確保し、脂質を避けることもできます。また、一汁三菜を基本としているため、満腹感も得られます」(宮崎氏)
ダイエット法のひとつとして話題になっている、ごはんなどの炭水化物を制限してやせる「糖質制限(ローカーボ)ダイエット」について、前出の宇都宮教授は警鐘を鳴らす。
「炭水化物を制限することによって、総摂取エネルギーが減り、その結果として体重が減ることはあります。しかし、こうしたダイエットは長続きせず、効果は短期的。安全性も証明されていません。それよりもごはんを中心とした伝統的な和食を軸に、食を楽しみながらダイエットに取り組むべきです」