テレビ番組全体がどれくらい見られているのかの指標となる「総世帯視聴率」(HUT)も、ゴールデンの時間帯で1997年の71.2%から2013年の63.5%まで大きく下がり、テレビ離れが鮮明になりつつある。その背景には何があるのだろうか。
枠にとらわれず、前代未聞のことをするのは、かつてはテレビの十八番だったはずだ。『8時だョ!全員集合』『オレたちひょうきん族』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』など、PTAから“低俗”と批判されながらも、視聴者を時に笑わせ、時に泣かせて高視聴率を叩き出した番組も数多かった。元日本テレビアナウンサーで江戸川大学教授の小倉淳氏が語る。
「私が出演した『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』には、“上島竜兵はなぜ裸なのか”“なぜいじめられるのか”といった視聴者からの批判が殺到しました。予定調和を予定じゃなく見せられたとすれば、ある意味、成功だったといえると思います。でも、今はいくら現場がそういう試みをしようとしても、いろいろな制約から見せ方が難しくなっている」
かつては、多少無茶苦茶な番組作りをしてテレビがPTAなどからの批判に晒されても、多くの視聴者がテレビ局を支持し、その応援の声が制作者の熱意を支えるという側面があった。
ところが近年では、PTAや一般視聴者からの批判に敏感に反応し、作り手が自主規制するケースも増えている。放送界の第3者機関であるBPO(放送倫理・番組向上機構)に内容をチェックされ、問題があれば自社の検証番組を放送せねばならない──制作現場が萎縮するような条件ばかりが整えられている。
「番組制作の自由度がなくなり、面白い番組が作れなくなっていく。すると視聴率が下がって、制作側は視聴者という強い味方を失い、ますます立場が弱くなる。その悪循環で、どんどん現場が窮屈になっていった」(制作関係者)
※週刊ポスト2013年12月20・27日号