映画『沈まぬ太陽』で主人公の恩地元役を演じた渡辺謙(54才)は、11日27日に開かれたしのぶ会でこんな弔辞を述べた。
「恩地のセリフに『矜持』という言葉がありました。山崎先生は己の矜持と向き合い、いばらの道を歩まれました。先生の矜持を心に刻んで俳優人生を歩こうと思っています」
総計3000万部にも達する、社会の暗部に鋭くメスを入れたベストセラーの数々は、その矜持から生み出された。
毎日新聞社に勤務しながら小説を書き、1957年、生家の老舗昆布店を題材にした『暖簾』でデビュー。“取材の鬼”と称されるほどの綿密な取材と膨大な資料を積み重ね、『白い巨塔』『華麗なる一族』などの壮大な物語を紡いでいった。
1993年には私財を投じて山崎豊子文化財団を設立。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の印税を運営費にあて、中国残留孤児の子弟の支援に力を注いだ。
山崎さんの甥で山崎豊子文化財団事務局長の山崎定樹さんが言う。
「日頃から『人の3倍も5倍も努力しなさい』と言われていました。彼女自身も本当に努力を積み重ねていて、死ぬ間際まで『書きたい』とつぶやいていました」
その言葉通り、定樹さんによると、山崎さんは全身の痛みに悩まされながらも、最期の瞬間まで万年筆を持って原稿用紙に向かっていたという。
※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号