日本のクオリティペーパーを自任する朝日新聞。大学入試で記事が何本引用された、などを誇らしげに宣伝文句に使っている。その自画自賛とは裏腹に紙面の質は年々劣化している。元社会部次長、編集委員の落合博実氏が一例を挙げる。
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朝日新聞の近年の消費税報道には、失望を通り越して怒りすら覚えた。
小泉政権(2001~2006年)の頃から徐々に財務省の主張に沿った論調になり、完全な増税路線への転換点となったのが2007年12月9日付の<消費増税なしに安心は買えぬ>という社説だった。以降、社説で増税を求め続けた。
2012年4月6日付の社説<消費増税と政治 言い訳やめて、本質論を>では、
<増税論議で、気になっている言葉がある。「まずはむだの削減だ」「まずはデフレ脱却だ」「まずは衆院の解散だ」の「まずは」である>
<「まずは」と言っているうちに、借金はどんどん膨らむ>
と財務省の言い分そのままに危機感を煽り、<有権者の審判は消費増税を決めたあとに仰げばいい>とまで言い切ったのには?然とした。
読者を馬鹿にしたような態度は2011年12月28日付の社説<社会保障と税 オトナはわかってる?>に顕著だ。
<いま、政治をやっているオトナたちは、消費税率を上げるかどうかで、大騒ぎなんだって>
と始まり、まだ存在してもいない世代に「早く増税しろ」と言わせる体裁の社説である。
<僕たちは、いわゆる「将来世代」><けっして、ザイムショウの回し者じゃないからね>と締めくくった。読後感は不快そのものである。
消費税には低所得者ほど負担率が大きくなる逆進性や、価格への転嫁が難しい下請け中小企業をひどく苦しめるといった重大な欠陥がある。
官公庁の途方もない血税の無駄遣いは放置されたまま。大増税による税収増を見込んで無駄遣いに拍車がかかるのは間違いない。社会保障や財政再建といった本来の目的に充てられる保証はない。
「増税の目的を見失うな」と朝日新聞はクギを刺してはいるが、力なくつぶやくだけといった印象だ。
加えて、朝日をはじめとする新聞各社は、新聞への軽減税率適用を恥ずかしげもなく求めている。
増税を煽っておいて自分たちだけは例外にしてほしいなど、それこそ子供でも「オトナは何を考えてるの?」と思う話ではないか。
■落合博実(おちあい・ひろみつ)
1941年東京生まれ。産経新聞記者を経て1970年に朝日新聞入社。東京本社社会部次長としてリクルート事件の担当デスク、編集委員時代は警察の組織的な不正経理追及などに取り組む。2003年に退社してフリーランスに。
※SAPIO2014年1月号