国内

朝日新聞OB「消費増税論じる社説の読後感は不快そのものだ」

 日本のクオリティペーパーを自任する朝日新聞。大学入試で記事が何本引用された、などを誇らしげに宣伝文句に使っている。その自画自賛とは裏腹に紙面の質は年々劣化している。元社会部次長、編集委員の落合博実氏が一例を挙げる。

 * * *
 朝日新聞の近年の消費税報道には、失望を通り越して怒りすら覚えた。

 小泉政権(2001~2006年)の頃から徐々に財務省の主張に沿った論調になり、完全な増税路線への転換点となったのが2007年12月9日付の<消費増税なしに安心は買えぬ>という社説だった。以降、社説で増税を求め続けた。

 2012年4月6日付の社説<消費増税と政治 言い訳やめて、本質論を>では、

<増税論議で、気になっている言葉がある。「まずはむだの削減だ」「まずはデフレ脱却だ」「まずは衆院の解散だ」の「まずは」である>

<「まずは」と言っているうちに、借金はどんどん膨らむ>

 と財務省の言い分そのままに危機感を煽り、<有権者の審判は消費増税を決めたあとに仰げばいい>とまで言い切ったのには?然とした。

 読者を馬鹿にしたような態度は2011年12月28日付の社説<社会保障と税 オトナはわかってる?>に顕著だ。

<いま、政治をやっているオトナたちは、消費税率を上げるかどうかで、大騒ぎなんだって>

 と始まり、まだ存在してもいない世代に「早く増税しろ」と言わせる体裁の社説である。

<僕たちは、いわゆる「将来世代」><けっして、ザイムショウの回し者じゃないからね>と締めくくった。読後感は不快そのものである。

 消費税には低所得者ほど負担率が大きくなる逆進性や、価格への転嫁が難しい下請け中小企業をひどく苦しめるといった重大な欠陥がある。

 官公庁の途方もない血税の無駄遣いは放置されたまま。大増税による税収増を見込んで無駄遣いに拍車がかかるのは間違いない。社会保障や財政再建といった本来の目的に充てられる保証はない。

「増税の目的を見失うな」と朝日新聞はクギを刺してはいるが、力なくつぶやくだけといった印象だ。

 加えて、朝日をはじめとする新聞各社は、新聞への軽減税率適用を恥ずかしげもなく求めている。

 増税を煽っておいて自分たちだけは例外にしてほしいなど、それこそ子供でも「オトナは何を考えてるの?」と思う話ではないか。

■落合博実(おちあい・ひろみつ)
1941年東京生まれ。産経新聞記者を経て1970年に朝日新聞入社。東京本社社会部次長としてリクルート事件の担当デスク、編集委員時代は警察の組織的な不正経理追及などに取り組む。2003年に退社してフリーランスに。

※SAPIO2014年1月号

関連キーワード

トピックス

依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン