2013年もまた、多くの人が逝った。輝かしい業績を残した人々の多くは、裏ではひたむきな努力を重ね、自らを厳しく律している。生き様だからこそ、その口から発せられる言葉が、名言として人々の心を打つことになる。偉人たちが、さよならの代わりに、家族に、友人に、そして私たちに遺した名言の数々。
史上最多の優勝32回。「巨人、大鵬、玉子焼き」の流行語にもなった昭和の大横綱・大鵬(本名・納谷(なや)幸喜)さん。2013年1月19日、心室頻泊のため72才で亡くなった。三女で、元貴闘力と結婚(その後、離婚)した納谷美絵子さん(39才)は、4才の頃のエピソードが忘れられないと話す。
九州場所の宿舎で飼っていた犬に追いかけられ、顔から転んで血まみれになってしまった美絵子さん。怒られると思っていたら、大鵬さんは笑顔でこう褒めたという。
「さすがワシの子だ。顔から落ちるとは将来が楽しみだ。男の子に生まれたら横綱だったな」
そんな優しい大鵬さんが、口を酸っぱくして言っていた言葉がある。
「近所の人を大切にしなさいということでした。どんなに地位のある人といても、近所の人が来たらそちらを優先しなさい、と。近所の人に支えられてこそ今の自分があるとの考えでした」(美絵子さん)
記録だけではない、記憶に残る横綱の由縁だ。
※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号