寒さが増すこれからの季節、気になるのは加齢による膝や腰の痛み。加齢を気にする年代でなく、直接痛みを感じるほどじゃなくても、何となく違和感を覚えたり、可動域が狭くなったと感じる人も多いのではないだろうか。近年、そんな関節痛に効果があるといわれ、サプリメントの定番として知られているのがグルコサミンやコンドロイチン。しかし今、これらと並ぶ新たな成分として、徐々に注目を集めているのが「クリルオイル」だ。
「クリルオイル」とは、南極海に生息する動物プランクトン“ナンキョクオキアミ”から抽出されたオイル。エビによく似たオキアミは、別名クリルと呼ばれ、体長は5~6cm。地球最大の生物資源といわれ、南極海に生息しているだけで、その量は4億トンを超えるという。また、クジラの主食としても知られることから、巨体を支える大きなパワーを秘めていることが分かる。
この「クリルオイル」には、オメガ3脂肪酸(以下、オメガ3)と呼ばれる脂質が豊富に含まれている。オメガ3はDHAやEPAといった、イワシやサンマなどの魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の総称で、最近ではコレステロールや中性脂肪の低下、血液サラサラといった健康効果が注目されているが、このオメガ3は人間の体内で作ることができない。そのため、厚生労働省でも1日1g以上の摂取を推奨している。
また消費者庁では2012年「食品の機能性評価モデル事業」において、機能性について明確で十分な根拠があるとして「心血管疾患リスク低減」「血中中性脂肪低下作用」「関節リウマチ症状緩和」ついてA評価とした。
富山大学名誉教授で医学博士の浜崎智仁氏は、「日本人の従来の食生活では、食事の中でオメガ3を十分に摂取できましたが、最近は家庭で魚を食べる機会が減少傾向に。アレルギーや家庭環境の事情で、魚をあまり食べることがない人は、サプリメントでオメガ3を摂取するという方法もあるでしょうね」という。
さらに「クリルオイル」に含まれるオメガ3の場合、「一般的な魚由来のオメガ3とは構造が異なる」と語るのは、東京海洋大学ヘルスフード科学プロジェクト特任教授の矢澤一良氏だ。
「『クリルオイル』のオメガ3は、リン脂質と結合しているのが最大の特長。リン脂質は乳化剤として体内への吸収を促す作用があります。そのため、水に溶かすと魚油は水と分離してしまいますが、『クリルオイル』は水と均一に混ざります。つまり体内への吸収率が高く、効き目を実感しやすいといえるのです。また、それに加えてアスタキサンチンも豊富。抗酸化力が高く、油の酸化を防ぐアスタキサンチンが、オメガ3の鮮度を保つ役割を果たしています」(矢澤教授)
オメガ3の恩恵を受けることで、関節痛や生活習慣病の予防が期待できるだけでなく、さまざまな効果も注目されている。
「今後も『クリルオイル』に関して、いろいろな研究がなされると思いますが、これまでの研究結果のひとつで“精神の安定”に作用することが分かっています。
関節痛に対する効き目についても証明されていますが、そこには“痛み”“こわばり”といったストレス自体を和らげ、精神を安定させる――といった面があるのは、嬉しい成分ではないでしょうか」(浜崎教授)