「アホ」という言葉は関西では単純な罵倒ではない。芸人の坂田利夫は「アホの坂田」と呼ばれているが、蔑まれ罵られたりしているのではなく愛着がこめられている。日本球界で「アホ」という言い方をよく使うことで知られる野球評論家の江本孟紀氏も、同じように期待を込めて「アホ」と口にしている。その江本氏に、2013年日本球界を振り返って愛すべき「アホ」なこととして。日本ハム・大谷翔平の二刀流挑戦について語ってもらった。
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日本ハム・大谷翔平の二刀流挑戦もアホな話でしたね。昨年優勝した球団が今年は最下位。チーム強化という発想がなく、強くても弱くてもいいから今年は二刀流で金儲けしよう、ということだけ考えた結果です。
栗山英樹監督としては、どっちでもいいわけですよ。球団のいいなりになっていれば、結果がどうなろうと自分に害はない。しかし他の選手は「冗談じゃねえよ」って思ってますよ。だってレギュラーになってヒット2本打っても、翌日は「大谷が出るから」って外される。投手だって同じです。何人そういう“犠牲者”が出ているか。「大谷君~、パチパチ(拍手)」なんて応援する選手なんかいませんよ。いたら本当のアホです。
プロは規定投球イニングと規定打席に到達し、記録に名前が出て初めて認められるんです。二刀流だと何年やっても不可能でしょう。大谷は投手一本で行くべきです。投手は一度出来上がると長持ちするが、バッターは難しい。今から体作りをして、来季はローテーションを守って投げれば、10勝、15勝が望める。そうしてまた売りゃ、儲かるじゃないですか(笑い)。
※週刊ポスト2014年1月1・10 日号