「アラフィフの星」「夢見る48歳」。こんなキャッチコピーで近ごろメジャーデビューを果たした“つぼみ”の歌手がいる。
佑多田三斗氏(48)。往年の男性アイドルを彷彿させる爽やかなルックスと眩しい笑顔。その若々しさから年齢を感じさせない。
歌手名の由来は、「(早く)歌出さんと!=うたださんと」からきている。名付け親はレコード会社、日本コロムビア会長の平沢創氏で、叱咤激励の意味が込められている。ディスカウントショップで知られるドン・キホーテの安田隆夫氏(会長兼社長兼CEO)からは、「<うただ>といえば、○○じゃなくて三斗と言われるぐらいになれよ」と発破も掛けられる。
それだけではない。メジャーデビュー曲、その名も『つぼみ』のPV(プロモーション・ビデオ)を見てみると、パソナグループの南部靖之代表やフルキャスト創業者の平野岳史氏、ネクシィーズの近藤太香巳社長……、ベンチャー業界でその名を轟かせる社長たちが、次々と佑多田氏への応援メッセージを書いた色紙を持って登場している。
世間的には無名歌手に近い佑多田氏が、なぜこれほどまで起業家の知遇を得ているのか。それは佑多田氏自身も過去にベンチャー企業の会長を務めていたからである。その経緯を本人に聞いた。
「大卒後に勤めた医薬品メーカーでは、営業成績は抜群でした。人の10倍働いて何千万円という契約も取りましたしね。でも、あまりにもキャラが濃かったのか、『出る杭は打たれる』で社内の人間関係はあまりうまくいかず……。それでシステム開発に強い同期社員を誘って1996年にIT企業を設立したんです。ベンチャー経営者のネットワークも、そこで築いた財産です」(佑多田氏)
ITバブルも味方につけ、業績が絶好調のころは50人の社員を雇い、億ションに住んでベンツを乗り回すほど羽振りがよかったと話す佑多田氏。だが、無理な業容拡大が次第に経営を圧迫して3年前に倒産。負債総額は2億4000万円に及んだ。