明治時代、白熱電球からスタートした東芝は今、6兆円企業となった。この国を代表する重電であり、幅広い事業分野を抱える同社は2013年、新たな中期経営計画を発表した。今後は年率平均7%以上の成長を目指し、2015年度には売上高7兆円を見込む。電球で明治の人々の生活を照らした東芝は、次の時代にも輝き続けられるか。ジャーナリストの永井隆氏と海部隆太郎氏がリポートする。
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「成長エンジンを創り出すことが私の使命だ」
2013年6月に就任した東芝の田中久雄社長は、繰り返しそう語っている。就任後初となる中間決算(2013年4~9月期/連結)は、売上高が前年同期比13.2%増の3兆392億円、営業利益が53.7%増の1055億円。通期見通しでも売上高を前年同期比8.6%増の6兆3000億円、営業利益は約50%増の2900億円へと従来予想から上方修正するなど、幸先のいいスタートを切った。
かつて東芝は、「原発と半導体」を2大事業として掲げていたが、福島第一原発事故を受け、方針転換を迫られた。不安感が拭えない現状で原子力事業を前面に打ち出すことは避けるべきとの判断があったのは当然だろう。
現在の経営方針では、原子力はエネルギー分野の一つとしての扱いだ。経営方針説明会では「火力」が先に説明されたのが象徴的と言える。火力では、最新のコンバインドサイクル発電では熱効率62%を達成。これは世界最高水準で、技術力の高さをアピールする。 原子力は2本柱でこそなくなったものの、もちろん軽視されているわけではない。
東芝は2006年、米国の原子力関連企業・ウエスチングハウス社(WH)を傘下とし、2つのタイプの原発に対応できることになった。東芝はBWR(沸騰水型原子炉)、WHはPWR(加圧水型原子炉)が得意だ。これで世界のあらゆるニーズに対応する態勢が整った。
世界では、原発の新設計画が進んでいる。中国50基、ロシア30基のほか欧州や新興国でも原発新設が計画されている。日本の原発縮小論とは裏腹に、グローバルで見れば原発需要は増えている。
2タイプの原発を手がけられる強みは大きい。実績を見ても、東芝グループは世界429基の原発の28%を製造し、シェア1位(設備容量ベース)。現在はそれを活かし、フィンランドやベトナムには、BWRの進化形であるABWRの売り込みで攻勢をかけている。
「WH製で最新鋭の『AP1000』というPWRは、米国で4基、中国で4基受注し、建設中です。さらにチェコのテメリン原発3・4号機にも売り込み中。競合とのコンペで『最上位評価』を得て優位な状況です」(同社関係者)