何でも「日本が悪い」と叫ぶ韓国の官民あげたヒステリーに世界が辟易している。いわばその発端とも言える歴史歪曲が当たり前の韓国教科書に、日本統治時代の近代化推進など、「日帝時代」の良い面も取り上げた画期的な新版が登場した。
韓国版・新しい歴史教科書に、歴史学界を支配する左派から激しい攻撃が加えられ、大論争が起きている現状について、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が報告する。
* * *
新しい高校歴史教科書(韓国史)の記述を巡る争点は2つある。いわゆる「日帝時代」と称される日本統治時代(1910~1945年)の記述と、戦後(解放後)の国内政治の評価だ。左派・野党勢力は「戦前の親日と戦後の独裁を擁護している」と糾弾し、検定取り消しを求めている。
特に、日本統治時代の記述については「日本支配を容認、美化する植民地近代化論である」と猛烈に非難。この時代の社会や経済、文化の発展など多様な面を相変わらず認めようとしない。
新教科書は版元の名前から「教学社版」と呼ばれ、今や与野党の激しい政争の対象になっている。たとえば筆者(黒田)がらみでこんなエピソードさえ起きている。
まず野党・民主党は、与党・セヌリ党の重鎮、金武星議員が党内の勉強会で、教学社に対する左派のテロ脅迫を非難し教学社版を擁護したのは、日本の極右とまったく同じ歴史観だとし、金議員を「親日派」と非難する公式論評(9月25日)を発表した。その論評にはこう書かれている。
「日本の代表的極右新聞、産経新聞の黒田勝弘支局長はコラムで教学社教科書を『他の7種が現代史を“独裁と抵抗”という政治中心の暗い面を強調しているのに対し、経済発展と国力増強という明るい面に注目している』と激賞している。
その激賞のわけは、この教科書が植民地近代化論から出発しているからだ。日本の極右派と金武星議員の歴史観が違っていないという点があらためて確認された」
これに対しセヌリ党は翌日、やはり公式論評で「日本の保守言論人のコラムと似ているといって非難するのは詭弁にすぎない」として、歴史学者E・H・カーを引用しつつ「歴史解釈の多様性」を強調し金武星議員を擁護した。
筆者のコラム(9月21日付の産経新聞・国際面コラム「緯度経度」)は韓国における左右、与野党対立による「歴史教科書騒ぎ」を客観的に紹介しただけで教学社版を激賞したわけではないが、こうやって日本の報道まで政争に利用しているのだ。
左派や野党陣営の集中砲火を浴びている教学社版の執筆者は6人。
代表者格の権熙英・韓国学中央研究院教授(57)にインタビューを要請したが「ご存知のような状況で外国メディアに何か話せる段階ではない」と断わられた。国内メディアとも接触を避けているという。政争化しているため言動は極力慎まなければならない事情があるのだ。
※SAPIO2014年1月号