毎回、評者に1人1冊を選んでもらう書評コーナー。今回は年末年始に合わせ3冊の本をピックアップしてもらった。精神科医の香山リカ氏がピックアップしたのは、以下の3冊だ。
(1)『性と柔』(溝口紀子/河出書房新社)
(2)『「東洋の魔女」論』(新雅史/イースト新書)
(3)『浅田真央 そして、その瞬間へ』(吉田順/学研教育出版)
来たる東京オリンピックでも、日本の女子選手たちの活躍が期待される。しかし、女子スポーツが純粋な競技として認められるようになったのはつい最近のこと、いまだに選手らの肢体には男性からの好奇の目が向けられる。
(1)は、女子柔道が長らくエロティックな大衆文化と見なされてきた歴史を振り返り、ようやく92年のバルセロナ大会からオリンピックの正式種目になったものの、柔道界では女子は相変わらず弱者、異端者であるという事実が、豊富な文献や著者の経験から解き明かされる衝撃の書だ。
(2)伝説の「東洋の魔女」もまたスポーツ界からではなく日本の近代化を支えた紡績工場の中庭から生まれたと伝える。
(3)若い女子アスリートたちは「女がスポーツなんて」という呪縛から解き放たれ、純粋に競技に打ち込んでいるようにも見えるが、今度はメダル至上主義の中、世間の期待が彼女たちに押し寄せることになった。
「あの選手、美女だな」とハナの下をのばす前にぜひ読んでほしい3冊だ。
※週刊ポスト2014年1月1・10日号