プロ野球の黎明期、数々の伝説を作り上げた名選手たちが、もしも現代のグラウンドに降り立てばどんな成績を収めるか。今の球界への叱咤激励を込めた、“レジェンド”による大胆な“自己査定”。今回は村田兆治氏(64)。村田氏は1968年ロッテに入団。独特な「マサカリ投法」で活躍し、通算215勝をあげた。
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投手の分業制が当たり前になり、中継ぎや抑え投手にもホールドやセーブポイントがつき、それによって一定の評価が与えられ、高い年俸が貰えるようになった。その一方で、大した実績もないのに大幅に年俸が上がるなど、納得していないファンも増えたのではないでしょうか。何より、感動を与えるプレーが少なくなっていることに不満を覚えますね。
2013年シーズンでは、田中将大の24連勝が際立ちました。しかし、他球団の中に「田中を潰してやろう」という意気込みを見せる投手が見当らなかった。私が今の時代に投げていたら、監督に「田中にぶつけて下さい」と登板志願したと思います。もちろん、記録達成前になんとしても阻止しましたよ。
各チームも田中と対戦する際、エース対決を演出するなど、試合を盛り上げるような手段を講じなかった。「田中に勝つのも、裏ローテの投手に勝つのも1勝は1勝」という姿勢があからさまに見てとれたことが、観客動員に繋がらなかったのだと思います。
その背景にこそ、高年俸に繋がる数字至上主義があると思うんですよ。無理に田中にぶつかって負けると、年俸に響くということでしょう。
我々の頃は「3年はコンスタントに活躍しないと年俸は上がらない」という時代だった。1年目の成績をフロックにしないため、2年目、3年目の結果を出して本物になる。その過程では、当然他球団のエースや4番をねじ伏せないといけない。そこにはたゆみない研究や技術向上があったわけです。頭を使え、知恵を出せといわれた、我々の現役時代の頃の闘争心が見えてこないんです。
WBCのような国際大会では、日本代表の選手が凄い形相でプレーするのに、あの顔がシーズン中に見られないのが問題。技術的には未熟でも、高校野球の「甲子園」は毎年ファンを沸かせます。そこには全身全霊のプレーが呼ぶ共感があるからでしょう。
ここ一番、という場面で逃げない熱い選手が、今後増えることに期待したいと思っています。
※週刊ポスト2014年1月1・10日号