中国では圧倒的に水が足りない。水不足を表わす国際指標では、国や地域で1人あたりの水資源量(年間使用可能水量)が1700立方メートルを下回ると「水ストレス」状態にあるとされる。さらに、1000立方メートルを下回ると「水欠乏」、500立方メートル未満では「絶対的水欠乏」と見なされる。
国土交通省『平成25年版日本の水資源』によると、中国全体の1人あたり水資源量は約2000立方メートルで、世界平均(約7700立方メートル)の4分の1程度に過ぎない(日本は約3400立方メートル)。農林中金総合研究所の王雷軒氏のリポート(11年)によると、中国では1人あたりの年間水資源量が年々「減少傾向にある」という。
これが全土に平均してあるならまだいいが、地域別に見ると著しく不足している地域が多く、しかも人口密集地を抱えているから問題が深刻だ。日本には、そうした問題はほぼない。
中国国家統計局の公表データ(11年)で1人あたり水資源量を見ると、全31地域(省・直轄市・自治区)のうち、前述の「水ストレス」状態に当たるのは浙江省(1365立方メートル)など8地域。さらに、「水欠乏」状態が遼寧省(673立方メートル)など3地域、「絶対的水欠乏」状態が河北省(217立方メートル)など8地域もある。
特に都市部が深刻だ。首都・北京は134立方メートル、天津は116立方メートルに過ぎず、上海に至ってはわずか89立方メートル。中東の砂漠地帯にあるサウジアラビア(85立方メートル)並みに“渇いて”いる。上海在住のジャーナリスト・西谷格氏が語る。
「上海市は水源を市内から郊外、さらに上流へと移したが、それでも足りず、11年には長江下流にダムを造った。09年に水道管が故障して一時断水した時は、ミネラルウォーターを買い求める市民がスーパーに殺到しパニックに。水不足は暴動の引き金になりかねず、政府はどうにか断水させないように苦慮している」
※SAPIO2014年1月号