はびこる腐敗を防ぐため新政権が打ち出した方針は一定の成果をあげつつあるかのように見える。だが、中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰はこう疑問を呈する。
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習近平体制になって大きく打ち出された政策の一つに「贅沢禁止令」がある。各地の紀律検査委員会の下に設けられた巡視隊のメンバーが目を光らせ今年だけでも多くの党・政府の幹部が処分を受けた。その成果は年末になって国務院が実名とともに「十大成果」として公表したほどである。
こうした情勢を受けてか、いま中国でにわかに盛り上がってきているのが、「公費浪費罪」とも言うべき法律を制定すべきか否かについての議論だ。
もちろん“議論”といっても日本のように国民を巻き込んで論戦が沸騰するようなことはない。その中心となるのは常にメディアである。
今回、注目すべき記事を掲載したのは『中国青年報』である。『中国青年報』は反日デモで盛り上がる中国で、反日に熱狂する人々に対し<愛国と『害国』は紙一重。理性が両者の境界線だ>という記事を掲載して暴徒化するデモ隊に冷や水を浴びせかけた勇気のあるメディアとしても知られている。
その『中国青年報』が今回行ったのが、「公費浪費罪を制定すべきか否か」について行ったアンケートである。対象は9万170人で、ネットを通じて行った調査だった。
結果は、97.8%が制定を支持する回答であった。
まあ、当然と言えば当然であるが、なかでも国民がとくに神経を尖らせているのが、公費による接待で33.8%、第2位が20.7%、続く3位には公費による出張でのぜい沢であった。
第1位の公費接待では、日本の機密費のように中身を秘匿している点についても不満が強いことが明らかになった。
記事によれば、この「公費浪費罪」は2009年にすでに全人代(全国人民代表大会)で提案されたのだが、このときは中央紀律検査委員会の審査を経て、「いまはまだ成熟していない」という理由で見送られたという。『中国青年報』の記事は、いまこそそれをやる時期だという主張のためだ。
それにしても「公費浪費罪」がいまだにないというのであれば、今年捕まった官僚たちは、いったい何の罪で裁かれたのだろうか。