能楽や歌舞伎と並び、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録された。和食店で恥をかかない、細かい和食作法とは?
しょうゆをつけた刺身などを口に運ぶ際、垂れないように手を皿の代わりにして下に添える「手皿」。和食のマナーとしてはNGだ。
「手ではなく小皿を添えて食べればおしょうゆが垂れません。そもそも日本には、口元を隠しながら食すという文化がある。器で汁などが垂れるのを受け止めつつ、下を向いて食べることで、口の中が見えないようにするのです」(「分とく山」総料理長・野崎洋光さん)
お椀でお吸物をいただいた後、ふたを裏返してお椀にかぶせる人もいるが、「ダメです」と野崎さん。
「裏返しではなく、ちょっとずらしてふたをするのが正しい作法」(野崎さん)
そもそもふた付きのお椀で食べるのは、食事に余裕を持つためだ。
「おなかを満たすために、ただ食事をかきこむ――それだけでは終わらせないために、食の作法という『文化』が生み出されたのです」(野崎さん)
また、雑煮の汁を飲む際に箸を置いたままなのは、大間違い。
「お雑煮は『汁』ではなく、『煮物』というカテゴリーなので、箸を持っていただくのが自然。具を崩さないよう、軽く箸で押さえながら飲むのがきれいな食べ方であり、マナーです」(野崎さん)
料理を箸で口に運んでひと口だけ噛み切って食べ、残りを器に戻すのは、絶対にやってはいけない。新宿の京懐石料理「柿傳」半東(茶の湯で亭主を補佐し、茶事を手伝う)の妹尾美紀さんはこう語る。
「一度口にした料理をお皿に戻すのは、周りのかたから見ても快いものではないからです。あらかじめ器の中で口に入る大きさに箸で切り分け、少しずついただく。これは洋食でステーキをいただく時に、あらかじめナイフとフォークでひと口分に切り分けて食べるのと同じです」(妹尾さん)
※女性セブン2014年1月9・16日号