今年の紅白歌合戦では北島三郎が大トリを務めるが、1979年と1980年の2年連続で紅白の大トリを務めた“演歌の女王”八代亜紀(63才)が当時を振り返りながら、演歌の魅力を語ってくれた。
「『雨の慕情』は、1980年のレコード大賞もいただきました。授賞式では、8000人のお客さんの前で、“雨々ふれふれ♪”を振りつけしながら、みんなで大合唱したのを覚えてます」(八代・以下「」内同)
1980年以降も、石川さゆり(55才)『天城越え』(1986年)、島倉千代子さん(享年75)『人生いろいろ』(1987年)、美空ひばりさん(享年52)『川の流れのように』(1989年)と、日本人なら誰でも口ずさめるヒット曲が演歌から続々と生まれた。それは今のように100万枚売れても聴いたことのないような流行とは違う。子供から大人までが最後の歌詞まで歌えるようなものだった。
演歌は、よく「日本人の心」といわれる。その所以のひとつは、聴いた人が「自分だけの歌」と思えるからだろう。
そのため、演歌歌手は、ロックやポップの歌い手とは違う、別の力が必要とされている。八代が言う。
「ロックやポップは自分の思いを伝える“表現者”だけど、演歌は“代弁者”なんです。聴いてくれる人の心を大切にして、その情念、呼吸、息遣いをつかんで離さないように歌い上げる。だから、言葉のひとつひとつをきっちり伝えなければならない。演歌は、ごまかしがきかないんです」
そう言うと、八代は、本誌記者の前で、「つらいよ」という言葉を2通りの方法で表現してみせた。ひとつは、思いっきりつらそうな声で、もうひとつは、優しく労わるような声で。
「悲しい歌を悲しい気持ちで歌うと人は引いてしまう。でも、少し明るく歌うことで、逆に心の奥に響くんです」
※女性セブン2014年1月9・16日号