能楽や歌舞伎と並び、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録された。そこで、家庭での和食のマナーについて、『きょうの料理』(NHK)などで人気の料理研究家・鈴木登紀子さんに聞いた。鈴木さんが40年以上続けている料理教室では、最初に茶碗と箸の持ち方から教える。
「『いただきます』の後、まずお箸を手に取るかたがほとんどですが、お茶碗など器を先に掌(たなごころ=てのひら)にのせ、それからお箸を手に取るのが和の作法。お茶碗を先に持つことで、料理への感謝を表しますので、戻す時はお箸が先、お茶碗が後、がお約束です」(鈴木さん・以下「」内同)
家で食べる時は、面倒だからと取り箸をつけないことも多いかもしれない。でも、大皿や大鉢に盛られたものやおせち料理などを出す際は、取り分け用の箸と、お似合いの小皿を用意するのがマナー。
「家族だからいいのでは、と思われるかもしれませんが、子供たちはいずれ社会に出て、他人様と生きていかなくてはなりません。他のかたと一緒にお食事をする際に、うっかり直箸で恥をかかないように、日常生活の中で習慣づけておくべきなのです」
鈴木さんは「相手を思えば、思ってもらえるのよ」と生徒に必ず伝えている。
「相手を思いやる気持ちは、ご家族に対しても同じこと。『おいしいお料理で喜ばせてあげたい』『元気に育ってほしい』という思いが気配りを生み、気働きとなるのです。それが女性としての立ち居振る舞いを美しく輝かせます。食べることは生きること。大切な命を育むお料理は、もっとも深い無償の愛ではないかしら」
見返りを求めないのが、“和”の心なのだ。
※女性セブン2014年1月9・16日号