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川本三郎氏選出 未知の地や隣町など色々な旅を描いた本3冊

 毎回、評者に1人1冊を選んでもらう書評コーナー。今回は年末年始に合わせ3冊の本をピックアップしてもらった。評論家の川本三郎氏がピックアップしたのは、以下の3冊だ。

(1)『消えた国 追われた人々』(池内紀/みすず書房)
(2)『白山信仰の謎と被差別部落』(前田速夫/河出書房新社)
(3)『ニッチを探して』(島田雅彦/新潮社)

 旅の仕方は三つある。未知の土地を旅する。先人が旅した土地を辿る。もうひとつは、隣の町へ出かけてゆく。近所に買物に行くのも旅である。

(1)の旅先は、東プロシアという未知の国。恥ずかしいことに、この地を知らなかった。現在、地図を見ると、バルト海に面してロシアの飛び地としてある。かつての東プロシア。大半は旧ドイツ領。第二次世界大戦後、ソ連領になった。旅好きのドイツ文学者が、この地をめぐる。ヨーロッパの周縁の地の文化、歴史に教えられることが多い。

(2)は、辿る旅。日本各地に白山神社がある。我が家の近くにもある。加賀白山に始まる白山信仰に惹かれた民俗学者が各地の白山神社を訪ね、なぜ被差別の民が古来、白山神社を信仰したのかの謎を追ってゆく。旅から生れた力作。

 大人の男には蒸発願望がある。会社も家族も捨てて、放浪の旅に出たい。(3)は、エリート銀行員が会社におさらばして近所に旅する小説。この気持よく分かる。

※週刊ポスト2014年1月1・10日号

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