野球の世界的な普及を目的に活動するなど、今でも純粋に「野球」と向き合い走り続けている王貞治氏。そこには古き良き日本への思いと、自分を育んでくれた「球界への感謝」の念があった。そんな王氏が球界の現状について語った。
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これは僕の持論なんだけど、いつも「これからの若い選手にとって何がいいか」を考えるべきなんです。自分たちにとって何がいいかを考えては絶対にダメ。
野球というのは難しくて、選手以外で野球に関わって生きていくのは大変難しいんです。プロですらそうなんだから、アマチュアはもっと大変。
例えばゴルフなら、教えたら教えただけお金がもらえるじゃないですか。野球はそうはいきません。アマの若い指導者は、ほとんどが土日にボランティアでやっています。だから彼らのような人が、安心して指導できる環境作りも必要なんです。
そのためにはお金がいる。プロ野球の球団や選手は、自分たちのためだけに稼ぐのではなく、そういう活動のために稼ぐという意識を持ってほしい。
次代を担う子供たちのために施設を作ったりだとか、彼らに野球を教える場とかいうものにお金を使えば、協力してくれる企業も出てくるでしょう。稼いだものをいかに使うかということが大切なんです。
今、ポスティングの問題で色々いわれていますが、もともと選手がメジャーに行く道は、まず野茂(英雄)がつけてくれた。投手の道ができたら、今度はイチローが行って打者の道が開けた。彼らのおかげで日本の野球のレベルは間違いなく上がっている、アメリカに近づいているわけです。
何事も、誰かが先鞭を付けなければならない。今は小学生だって、日本のプロ野球ではなく、最初からメジャーを目指すような子も増えている。これは全体のレベルが上がるという意味でいいことなのです。その道を閉ざすようなことがあってはいけない。
●取材・文/永谷脩(スポーツライター)
※週刊ポスト2014年1月1・10日号