過去のデータを検証すると、「ハマの番長」に余計な負担が掛かってしまうかもしれない。来季から投手兼任コーチとなるDeNA・三浦大輔(40歳)。これまでも投手陣のリーダーとして、チームを引っ張ってきた三浦のコーチ就任に、高田繁GMは「肩書がある方が若手も聞きに行きやすいし、三浦も周りに気を使わず助言できる」と期待を寄せている。
だが、兼任コーチには選手生活に赤信号が灯ることになりかねない。21世紀に入ってから、2001年の阪神・和田豊に始まり、今年の日本ハム・稲葉篤紀、広島・前田智徳まで12選手が兼任コーチの職に就いたが、そのうち9選手が2年以内に引退している。
残りの3選手は、ヤクルト・宮本慎也(2009年から)、日本ハム・中嶋聡(2007年から)、日本ハム・稲葉篤紀(2013年)。中嶋は兼任コーチ1年目こそ60試合に出場したが、2年目には22試合に減少し、3年目はわずか3試合。その後もほとんど出場していない。稲葉は今季兼任コーチに就いたが、打率.203、3本塁打と極度の不振に陥り、来季からはコーチの肩書きを外すことが決定している。
稲葉は、今年の年頭に「栗山監督も、兼任すると選手寿命が短くなるのでは、と心配してくれて『負担がないようアドバイスしてやってくれ』と……」とスポーツ紙の対談で話していたが、不安が的中した形となった。
兼任コーチ就任後、実質的に3年以上現役を続けたのは宮本慎也だけ。来季、稲葉が外れることを考えると、11選手中9選手が2年以内に引退したことになる。その確率は8割を超える。それほど、兼任コーチには負担がかかるようだ。たとえば、阪神を長年支え続けた金本知憲には、2011年オフに兼任コーチ就任の話が持ち上がった。だが、和田監督は自身の経験を踏まえ、重荷になると判断。兼任を見送っている。
投手兼任コーチの誕生は、2002年の阪神・葛西稔以来、11年ぶりとなる。葛西は前年32試合登板と貴重な中継ぎの役割を担ったが、兼任コーチになると登板ゼロで、オフに引退している。あるスポーツライターは、こう分析する。
「コーチの肩書きがあると、コーチ会議に出席する必要が出てきます。すると、自然と自分の登板だけに専念できなくなる。もちろん断ることもできますが……。
そんな事情を知ってか、近年は投手兼任コーチが生まれてこなかった。1996年オフに広島は大野豊に打診していますが、拒否されています。翌年、大野は41歳で最優秀防御率のタイトルを獲得。兼任コーチを務めていたら、この記録が生まれていたかは微妙です。
三浦大輔は、今季チーム最多の9勝を挙げた紛れもないエース。DeNAにいちばん必要な投手です。自分の投球に影響が出なければ良いのですが……」
横浜の歴史を振り返ると、1989年に斉藤明夫(現・ロッテ投手コーチ)が34歳で兼任コーチに就任。18試合に先発し、8勝と数字を残している。三浦は「チームを強くするために、自分が出来ることの1つ」と明るく話したが、はたして一筋縄でいくかどうか。