Twitter で共通の話題をつぶやく際に使用されるハッシュタグで「艦これ」は2013 年の日本1 位を記録した。「艦隊これくしょん~艦これ~」は美少女に擬人化された日本海軍の軍艦を操り、提督となって戦うブラウザゲームだ。萌えとミリタリーのコラボレーションが人気で、ミリタリー分野も活況だという。萌えミリタリー専門雑誌「MC☆あくしず」副編集長の浅井太輔氏に、萌えミリタリーの可能性と将来への期待を聞いた。
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――萌えミリタリーをきっかけに、ミリタリー分野のすそ野は広がったのでしょうか?
浅井太輔(以下、浅井):ミリタリーはかなり知識が必要なジャンルで、新規参入がしづらい雰囲気がありました。新たに加わる若い人がどんどん減っていて、高齢化していたんです。このままでは市場的にも先細りすると思っていたので、2005 年に「萌えよ! 戦車学校」という、美少女イラストを挿絵にして詳しく戦車について解説した書籍を出版しました。すると予想外の大ヒットとなり、Amazonのランキングでも1 位になったんです。
この反響のおかげで、萌えとミリタリーを一緒に楽しみたい読者層がかなりいると分かり、2006年には萌えミリタリーファン向けの季刊雑誌「MC☆あくしず」を創刊しました。おかげさまで2013年12月発売の31号まで続いています。
正直なところミリタリー雑誌というのは多くても5 万部くらいの世界ですが、女子高生が戦車に乗るアニメ「ガールズ&パンツァー」や「艦これ」がブームになったことでミリタリーファン初心者が増え、2013年から部数が増えています。
――「ミリタリー」のコーナーを設ける書店が増えている印象があります。
浅井:昔はミリタリーの本というと、車やバイク、鉄道などの本が置いてあるコーナーの隅に少し置いてあるということが多かったように思えます。ですが、この5 年くらいでミリタリー本を置いてもらえる書店さんが増えてきました。
これまで戦車や軍艦の同人誌を出し続けてきた作家さんたちに聞いた話ですが、「長く出し続けているけれど、最近は売れ行きが良い」と喜んでいました。ガルパンや艦これとはどこにも書いてないし、美少女のイラストも載っていないのですが、とりあげる戦車や軍艦がそれらに登場するものだと、多くの人が手にとってくれるのだそうです。ガンダムが好きでモビルスーツの解説本を買うように、ガルパンや艦これをきっかけに元の戦車や軍艦を知ろうとする人が増えているんですね。
――MC☆あくしずのムック「日本海軍艦艇 ガールズイラストレイテッド」はページを開くと左は美少女擬人化イラスト、右は詳しい解説記事です。この本を読んで初めて「超ド級」の語源がイギリス戦艦ドレッドノートにあると知りました。
浅井:軍事用語が語源となった言葉は、日本語にはとても多いんですよ。でも、意外に知られていないんです。
「艦これ」というゲームで遊んだことで初めて「超ド級」という言葉の意味を知った人がかなりいるそうです。「ド」というのは「ドレッドノート」という革命的な戦艦の頭文字が由来。ミリタリー用語が一般的になった例のひとつです。ほかには、戦車など足の速い機械化部隊を使用して、敵の弱点を突破して一気に敵を倒す戦法を「電撃戦」というのですが、いまでは一般化して、「電撃結婚」など素早い行動のときに使われていますね。
――日本ではミリタリー関連は愛好していると公に言えない雰囲気が強くありました。
浅井:日本は第二次世界大戦の敗戦国ということもあり長らく軍事アレルギーのような状態でしたが、ようやく最近になってもう少し戦争や軍事について客観的に冷静に見ようという流れになってきました。
歴史を振り返ると、三国志や戦国時代、幕末の新撰組・白虎隊など、大きなファン層を持つジャンルはいろいろあります。時代は進んでいるので、第二次世界大戦に目を向ける人が多くなったのも当然の流れかもしれません。