2013年12月、北朝鮮のNo.2だった張成沢国防委員会副委員長が突然逮捕、銃殺された。「北朝鮮はいつ何をするかわからない」という恐怖に、世界は震撼。独裁者・金正恩第一書記は次に何をするつもりなのか。『父・金正日と私 金正男独占告白』(文藝春秋刊)の著者で東京新聞編集委員の五味洋治さんはこう読む。
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張成沢氏の裁判の判決文を読むと、軍人の中に仲間がいたとか、海外に資源を安く売ったといった表現があります。
それらは張氏ひとりではできないので、今後は数か月かけて張氏に繋がる人間を処刑していくでしょう。その規模は最大2万人ともいわれていますが、私は数百人ではないかと見ています。
粛清によって、短期的には国内を引き締める効果はあるものの、長い目で見れば、指導者に対する失望感が大きくなって、体制は揺らいでいく可能性が高いでしょう。
対外的な緊張状態が高まるのは、今年の春。2013年も2月に核実験、3月と5月にミサイル発射と、挑発的な行動を取りましたが、今年も韓国とアメリカの合同軍事演習に対して、戦争危機を煽る可能性は高い。昨年は張氏が戦争にストップをかけたといわれていますが、今度は彼がいない。
父親の金正日氏は度々中国を訪問して関係を深めましたが、正恩氏は指導者になって以来、一度も中国に行っていません。もはや国際的にも国内的にも、誰も彼にストップがかけられない状態です。
国境地帯に1万発並んでいるともいわれるミサイルで、実際にソウルが火の海になる可能性もあります。
安否不明となっている正恩氏の異母兄弟・金正男氏とは、私が2012年1月に本を出版して以来、接触できていません。張氏と親しく、開明派だった彼が後継者だったらどうなっていたか…。
いずれにしても、金正恩体制は今年、東アジア最大の懸念材料になるでしょうし、私たちはいつ爆発するかわからない爆弾がすぐ隣にある不安な毎日を過ごすことになります。
※女性セブン2014年1月23日号