読者離れ、広告収入減に歯止めが掛からない新聞各社は、販売部数維持のためなら手段を選ばない。高齢者を狙った悪質勧誘、いまだ続く新聞販売店への「押し紙」問題をジャーナリスト・鵜飼克郎氏がリポートする。
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2013年8月、国民生活センターは「日本新聞協会」と「新聞公正取引協議会」に対し、異例の要望書を出した。新聞の勧誘・契約を巡るトラブルがあまりに多いためだ。
同センターにはこの10年間、毎年約1万件の新聞勧誘・契約に関する相談が寄せられている。訪問販売関連では最多で社会問題となっているが、これを報じた全国紙は日経と産経の2紙だけだ。扱いは小さく、高齢者をターゲットにした悪質勧誘が多発していることにはまったく触れていない。以下は同センターに寄せられた相談内容だ。
・米や発泡酒、洗剤、バスタオルなどを渡され、アンケート用紙だと言われてサインをしたが、実は新聞の購読契約書だった(40代女性)
・老人ホームに入居するため、9年間の契約の中途解約を申し出ると、契約時に景品でもらったテレビを新品で返せと言われた(80代男性)
・購読期間1か月のつもりで契約したが、購読契約書には3年間と書かれていた(80代女性)
悪質な勧誘が後を絶たない一因として、販売店の厳しい経営状況がある。部数減だけでなく、販売店の経営を圧迫しているのがいわゆる「押し紙」問題だ。
押し紙とは、新聞社が販売店に実際の配達部数を超えて強制的に売り渡す新聞のこと。たとえば1000人の購読者しかいない販売店に対し、1500部の新聞を押し付ける。そのため500部が売れ残りとなるが、販売店はその代金まで新聞社に支払わなければならない。販売店に対する新聞社の優越的な地位を利用し、押し紙を強引に買わせる理由は、その分の売り上げというより「広告」だ。
新聞の広告価値は、発行部数を公査する「一般社団法人日本ABC協会」がカウントした部数によって決まる。押し紙を上積みすれば見た目の発行部数を維持できるため、広告料金を高止まりさせることができる。
「販売店だけでなく、ビジネスホテルやファミレスに無償で新聞を提供し、見せかけの部数を維持する手口もある」(広告代理店関係者)
これは広告主に対する詐欺ともいえる行為である。
※SAPIO2014年1月号