名字で呼び合う日本人。ただ、同じ漢字でも読みが違う名字は数多い。災害や事故などで被害者の読み上げは、テレビやラジオの重要な役割だが、「東太郎さんのように、複数の読み方が考えられる場合は、“ひがしたろう”さん、もしくは“あずまたろう”さんとアナウンスするようにしています。読み違えで消息情報がわからなくなってしまうことを避けるためです」(キー局報道番組関係者)というほど神経を使う。
こうした“同姓異読”は、出身地による違いで生まれることが多い。「西原」や「長野」は全国的には圧倒的に「にしはら」「ながの」と読まれることが多いが、
「高知では『さいばら』、佐賀では『ちょうの』と読むほうが一般的です。漫画家の西原理恵子さんは高知出身、巨人の長野久義選手は佐賀出身ですね」(姓氏研究家の森岡浩氏)
同様の例としては以下のようなものがある。
◯米田……全国の約9割は「よねだ」だが、青森では「まいた」、奈良の中南部では「こめだ」。
◯小柳……大半は「こやなぎ」だが、新潟では「おやなぎ」。
◯川辺……「かわべ」が圧倒的に多いが、東京・青梅周辺では「かべ」、愛知・渥美半島周辺では「こうべ」が多くなる。
また、最も多い読み違えが「濁音の有無」。人気漫画『釣りバカ日誌』では、主人公・浜崎伝助(ハマちゃん)と上司の間でこんなやり取りがしばしば登場する。
「おい、ハマザキ!」「僕はハマサキですっ!」
実はこの判別も、出身地の違いで推測できるという。
「一般的に濁るのは東日本、濁らないのが西日本という傾向があります。たとえば、歌手の中島みゆきさん(北海道出身)は『なかじま』ですが、中島美嘉さん(鹿児島出身)は『なかしま』です。また、お笑い芸人の山崎邦正さん(兵庫出身)は『やまさき』ですが、アンタッチャブルの山崎弘也さん(埼玉出身)は『やまざき』です」
ちなみにハマちゃんの出身は宮崎県。西日本だ。
「レアな読み方なら、呼ばれた人も“読めなくて当たり前ですよ”と笑いながら教えてくれますが、『上村』『東』『河野』のように読み方が拮抗していると、中には“俺の名前が読めないのか”“わざと間違えているのでは”と怒り出す人もいます。勝手な思い込みをせず、最初に名前の読みを聞くといいでしょう」(前出・森岡氏)
※週刊ポスト2014年1月17日号