日本では創業者の名字から企業名をつけるケースが多い。現在は「パナソニック」に社名変更しているが、「松下電器産業」は、創業者で「経営の神様」といわれた松下幸之助の名字が由来となっている。
他にも、「久光製薬」(久光仁平)、「ホンダ」(本田宗一郎)、「鹿島建設」(鹿島岩吉)、「ヤマハ」(山葉寅楠)、「カシオ」(樫尾忠雄)、「そごう」(十合伊兵衛)、「ミズノ」(水野利八)、「吉本興業」(吉本せい)、「イトーヨーカ堂」(伊藤雅俊)など、業界を代表する企業の多くが創業者の名字を由来にしている。姓氏研究家の森岡浩氏によれば、江戸時代の名残だろうという。
「明治になって名字を登録する際に、江戸時代の商家の屋号をそのまま使うことが少なくなかった。これは逆パターンですが、創業者の名字を屋号に使うのは、その名残といっていいのではないでしょうか」(森岡氏)
ただし、「トヨタ」は少し事情が異なる。「トヨタ自動車30年史」によれば、創始者の名前・豊田佐吉(とよだ・さきち)にちなんで、創業当時は「トヨダ」であった。ロゴや刻印も英語では“TOYODA”で、エンブレムは漢字の“豊田”を使用していた。
その後、米国に輸出をすることになり、英語での新トヨダマークを作ることになった。その時に「トヨダ」ではなく「トヨタ」のマークが採用される。
濁音がない方が言葉の調子がいいこと、総画数(8画)が縁起がいいこと、創業者の名字から離れることで、個人企業から社会的企業へと発展する意味を込めた──などが理由だという。
※週刊ポスト2014年1月17 日号