中国のネット上では、習近平主席が2013年8月19日に北京で開催された全国宣伝思想工作会議で行なった重要講話の全文が出回っている。A4判で16ページもある講話だ。
習主席は「インターネットを放置すれば、亡国亡党につながる手強い敵になる。インターネットは既に世論闘争の主戦場になった。われわれが耐え切り、勝利できるかが、わが国のイデオロギーや政権の安定に直接関わっている」と述べ、ネット世論に強い警戒感を見せた。
さらに党主導によるネット世論の形成を主張し、「現在のネット世論の背後では、西側における反中勢力が暗躍している」として、暗に米国を牽制した。そして、「敵はインターネットを通じて『民主的な普遍的な価値』を流布させて中国共産党の社会秩序を崩壊させ、共産党政権の転覆を最終目的としている」と危機感を露わにした。
中国のネットユーザーは6億人に上り、ブログやショートメールの投稿数は1日で約1億件に達している。すべてをチェックするのは不可能と思えるが、実際に政府批判の書き込みやブログは片っ端から消去されている。10月28日に北京・天安門広場前で起こった自動車自爆テロの写真や映像は、すでにほぼ完璧に消された。その任に当たる監視要員はネットポリス、あるいは世論分析官と呼ばれ、「約200万人いる」と北京紙「新京報」は報じている。
習指導部が発足してから中国駐在の海外メディアへの締め付けも厳しくなっている。これまで18年間も北京で取材を続けてきた米国人ジャーナリストのほか、習主席や温家宝・前首相のファミリービジネスを報じた米メディアの特派員、あるいは日本の大手新聞社中国総局長らの中国駐留ビザ申請が棚晒しにされるなど、水や大気汚染同様、報道をめぐる環境も日増しに悪化している。
■文:ウィリーラム 翻訳・構成/相馬勝
※SAPIO2104年1月号