永田町はなぜ劣化したのか。政治の世界を裏の裏まで知り尽くした政界OB、村上正邦氏(元自民・80歳)、平野貞夫氏(元民主・77歳)、筆坂秀世氏(元共産・65歳)の3人が、今の選挙制度の問題点を議論した。
村上:法律一つまともにつくれない。政治が劣化しているわけですよ。原因は、やっぱり選挙制度にあると思う。小選挙区制が政治を劣化させているんだよ。
筆坂:同感です。早い話が、小泉チルドレンも小沢ガールズも全然残らない。風向きが変われば、オセロゲームみたいに変わる。長期的に政治家を育てていく仕組みになってない。一種の使い捨てになっている。
平野:私はそうは思わないな。世界中で中選挙区の談合政治をやってるところは、もうどこにもないですよ。
村上:いや、単純な小選挙区ではなく、比例代表が入るわけですよ。今回、みんなの党から出たうち、13人が比例だっていうんだから。
筆坂:もし小選挙区とか選挙区の議員だったら、あんなに簡単に政党を移れないですよ。地元の後援会と相談しなきゃ移れないでしょう。有権者と接触がない議員は、本物の政治家になれないんですよ。それは比例代表の弊害だな。
村上:党名も「結(ゆ)いの党」なんておかしな名前だし。「みんなの党」もそうだけど、政党名は理念やイデオロギーを表わすものなのに、これじゃ集まって新党を作ったという以上の意味はない。なんでも包める風呂敷だ。
筆坂:「結い」というのは、もともと農村の互助組織の名称だったんだよね。田植えのときの。私ら子供のころはそう呼んでたよ。自分らで互助会だって認めちゃってるわけ。
村上:だから、この選挙制度を採用してから、健全な野党っていうのは生まれてきてないんですよ。
平野:でも、小選挙区を採用していない参議院も機能していないわけですから、政治劣化の原因は制度じゃない。人間の問題です。
筆坂:いや、選挙制度の影響は大きいですよ。小泉純一郎という人は当初、小選挙区制に反対して、「こんな制度をつくれば、党執行部、総裁が圧倒的な力で党を支配してしまう」といっていた。まさにその通りになった。特に小選挙区なんて公認されなかったら終わりなんだから。比例だってそう。完全に上から牛耳られる仕組みができてしまった。
【プロフィール】
●村上正邦(むらかみ・まさくに):1932年生まれ。1980年に参議院議員初当選。自民党国対委員長、労働大臣、参議院自民党幹事長、参議院議員会長を歴任した。
●平野貞夫(ひらの・さだお):1935年生まれ。衆議院事務局に務めた後、1992年に参議院議員初当選。自民党、新進党、自由党、民主党を渡り歩いた。
●筆坂秀世(ふでさか・ひでよ):1948年生まれ。日本共産党入党後、1995年に参議院議員初当選。党中央委員会常任幹部会委員、書記長代行などを務めた。
※週刊ポスト2014年1月17日号