ライフ

薬剤抵抗性うつ病に注目の新薬登場 約30%の患者が寛解した

 年々増加傾向にあるうつ病に対する治療は、抗うつ薬などの薬物治療が行なわれる。2種類か3種類の薬を服用しても改善しない症例に対する新たな治療法として、反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)が注目されている。頭に刺激装置を置き、頭蓋内に磁場を誘導させて神経を刺激するもので、欧米ではすでに実用化されている。日本でも承認に向けガイドライン作成などが始まっている。

 厚生労働省による医療機関に受診中の出口調査によると、精神疾患の患者数は約320万人で、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とすることが決まった。精神疾患のうち、3分の1の約100万人がうつ病と推計され、年々増加の傾向にある。

 うつ病は主に薬物治療が行なわれるが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)など、2~3種類の抗うつ薬でも改善しない薬剤抵抗性うつ病に対する治療として、注目されているのがrTMSだ。

 これは頭の外側に置いた刺激装置に電荷を蓄え、瞬間的にコイルに電流を流すことで磁場が発生し、神経を刺激していく治療だ。すでに欧米では薬剤抵抗性うつ病に対する治療として実用化されている。

 杏林大学医学部付属病院精神神経科の鬼頭伸輔医師の話。

「当大学では臨床研究の一環として、複数の抗うつ薬で改善しなかった130例の患者にrTMSを実施したところ、約30%の患者が寛解しました。アメリカの大規模な研究でも、1種類の抗うつ薬を服用しても効果がなかった患者にrTMSを実施した結果、約25%に効果があったという報告があります」

 日本で治療対象の薬剤抵抗性うつ病患者は、約50万人と推測されている。双極性障害(躁うつ病)に対する治療効果は現在、検証中である。

 副作用は、頭痛や刺激部位の痛みなどが主なものだが、0.1%未満とごくわずかであるが痙攣が起こることもある。家族に、てんかん患者がいたり、以前痙攣したことがある人は治療に対して注意が必要だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2014年1月17 日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン