企業のトップとは思えない、“逆ギレ”発言は、いまなお「歴史に残る会見」として語り継がれている。「私は寝てないんだ!」──。
2000年6月、大阪を中心に、死者1人、被害者約1万5000人を出した、雪印の集団食中毒事件。商品の全面回収を発表した記者会見の場で、石川哲郎社長はマスコミからの質問攻めに冒頭の言葉を吐き捨てて会見場を去った。
食中毒発生後、製品回収や記者発表が後手に回り、雪印への不信が強まるなかでの発言だっただけに、批判はさらに高まった。当時を知る新聞記者が明かす。
「社長には、現場から何も情報が上がっておらず、“手ぶら”で会見に臨んでいた。『社長は頭だけ下げていればいいんです』と周囲からいわれていたようだ。それを真に受けた社長が、記者からの追及を受けて、パニックになったんでしょう」
この時の教訓を生かしてか、その後、同社のマスコミ対応は大きく変化したという。
「記者会見では必ず原稿を用意するようになった。マスコミに対しても横柄だと思われる態度をとらないよう徹底した指導がなされたと聞いています」(大手紙経済部記者)
石川氏はその後、辞任。出身校である小樽商科大学のOB会長を務めた後、今は隠居生活を送っている。最近の食品偽装事件の対応は、石川氏の目にどう映ったのか。自宅を訪ねると言葉少なにこう語った。
「もう過去のことです。いまは元気で過ごしています。もう済んだことなので申し上げることはありません」
※週刊ポスト2014年1月17日号