ヒットする作品には、必ず脇で光る存在があるもの。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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新年の幕が開きました。大人気のNHK朝ドラ「ごちそうさん」も、いよいよ後半スタートです。
西門悠太郎・め以子の夫婦に3人の子どもができた。父・正蔵が家に返ってきた。もろもろの変化はあるけれど、何が目をひいたといって、アレほど驚いたことはありません。
彼女の変身ぶりです。ドラマが始まった当初は、蚊の鳴くような声で引っ込み思案で隅っこにいた。パッツン前髪に着物で前屈み、地味で小さな存在だった。それが、もうびっくり。
何度も目を凝らした。本当に同じ人かなと、まじまじと見てしまった。テレビ画面に近寄ってあらためてその顔を確認してしまった人、私以外にもきっといたはず。
ワンピース姿にウエーブをかけた髪の毛が肩まで伸び、前髪はぐっと上げておでこを出す。アイメイクした横顔は、きりっとしたビジネスガール。かつての希子とはまったくの別人にしか見えない。希子演じる高畑充希さんが、素晴らしいカメレオンぶりを発揮しています。
役者は変身の動物。これほど見事に変わることができるのは、高畑さんという役者の中に、変身する才覚が息づいているから。自分自身も、過去のキャラクターも、いったんきれいに捨ててゼロリセット。そして、また別のものになりきる。役者は捨てる才能を問われる職業でもあるのです。
「かわいいままでいたい」「きれいに見せたい」といった余分な気持ちが少しでも残っていたり、過去や自分を引きずっていたりすると、次々に別のキャラクターになりきるのは難しい。不思議なことに、役者にそうした躊躇や迷いがあると、テレビ画面を通してお茶の間の私たちにも伝わってきてしまうのです。
高畑さんは若いのに、そのことをよく自覚している。
「せっかく一人の人生長くやらせていただけるんだもの、悔いなく、とどまらず、女子→女→おばちゃん 楽しく老けていけたら、と思っています」と、彼女は自分のブログに書いているのですから。
ハァー、期待できるなあ。これから見られるオバサン姿?を楽しみにしたい。
さて、高畑さんが「変われる役者」だとするなら、一方に、変わりたくても変われない役者さんが。どうやっても三人の子持ちに見えないと思うのは私だけでしょうか?
スクープ報道によると、年始のお休み期間、夫役・東出昌大くんの実家でお雑煮を楽しんだとか。西門夫婦の親交を深めるのもいいけれど、この際、演技の稽古も大切かも。
なんだか新年早々、小姑・和枝さんの「いけず」が乗り移ってしまったようですね、すみません。後半の「ごちそうさん」に期待と愛をこめての辛口まで。