プロ野球・横浜DeNAが正捕手を流出させた。阪神タイガースはFA移籍した久保康友の人的補償として、2年連続で100試合以上マスクを被った鶴岡一成(36)を指名。阪神は藤井彰人(37)、日高剛(36)というベテラン捕手を抱えているだけに、DeNAにとっては想定外だったようだ。
それにしても、正捕手の移籍は痛い。昨季前半は高卒2年目の高城俊人と鶴岡の2人が交互にスタメンを張っていたが、高城はリード面やキャッチング以上に、打撃面でプロの壁に苦しみ、51試合出場ながらヒットはわずか15本で、打率1割3分6厘。
4月末の阪神3連戦では9打数0安打で7三振を喫したり、22打席連続ノーヒットを記録するなど貧打に苦しんだ。育成の意味もあり、スタメン起用されていた高城だが、7月14日を最後に一軍での出場機会なし。後半戦はファーム暮らしが続いた。
その高城に代わって、黒羽根利規が2番手捕手となった。だが、シーズンの半分しか一軍に帯同しておらず、スタメン出場はわずか18試合。黒羽根も高城と同じく、打撃面での不安が残る。最終戦で猛打賞を放ったことで、打率2割6分7厘でシーズンを終えたが、その前日までは2割2分8厘。昨季、初めて打率が2割台に乗った打者なのだ。スポーツライターはこう話す。
「二冠王のトニ・ブランコや成長著しい梶谷隆幸を抱える強力打線のDeNAは、下位打線にチャンスが回ってくるケースが多く、8番はポイントゲッターになる打順。勝負強い鶴岡の流出は、守備面はもちろん、打撃面で大きすぎる痛手となります。正捕手候補となる高城と黒羽根は、鶴岡とあまりにも差が開き過ぎています」
得点圏打率を見ると、3捕手の差がさらに際立つ。鶴岡は3割3厘を打っているが、高城は2割ちょうど。黒羽根に至っては、7分7厘と1割にも満たない数字だった。
鶴岡の得点圏打率は、セ・リーグの正捕手のなかで群を抜いてナンバーワン。阿部慎之助(巨人)の2割8分6厘をも上回っている。その証拠に、打点40をマーク。阿部の91打点は別格としても、鶴岡より打席数の多い石原慶幸(広島)の35打点、谷繁元信(中日)の34打点、藤井彰人(阪神)の24打点を上回る好成績だったのだ。
「高城と黒羽根の打撃面が向上しない限り、DeNAは打線の力がかなり落ちることになります。9番の投手のみならず、8番の捕手までも安全パイとなると、投手にとってはかなりラク。一息つける回ができるので、上位打線に力を注ぎ込めますからね」(同前)
鶴岡流出は、DeNAにとって大きな不安材料となるかもしれない。