最近ネットでしばしば話題になるのが、子どもにアニメの登場キャラなどの名前を付けたり、珍しい漢字や読み方を採用したりする「キラキラネーム」問題。こうした名前には批判的な声も多いが、名前を付けられた子どもは、名前を変えることはできるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
私の名前は今流行りのキラキラネームです。両親があるアニメが大好きで、その作品の主人公の名前を漢字の当て字にしています。20数年前は珍しい名前でしたし、学校でもイジメられ、社会に出てからも取引先などで笑われる始末です。このような理由でも、裁判所に訴え出れば名前の変更は可能ですか。
【回答】
家庭裁判所の許可を得て、名前を変えることはできますが、簡単ではありません。戸籍法第107条の2は、「正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て」できると定めています。改名には正当な事由が必要なのです。
これは、名前が個人を特定する役割を果たしており、一旦決まった名前を変更すると、周りに与える影響も少なくないからです。従来の名前では社会生活上著しい支障があるような場合でないと、改名は認められません。
どんな場合かというと、例えば、
(a)/営業上の理由から先祖代々の名前を襲名するとき。
(b)/近所に同姓同名の人がいて紛らわしく著しく不便なとき。
(c)/僧侶として得度するなど宗教活動に専念する上で必要なとき。
(d)/珍奇な名前、外国人に紛らわしい名前、著しく難解・難読の名前で、社会生活上著しく不便なとき。
(e)/日本に帰化して日本風の名前に改めるときなどです。
最近では性同一性障害者について、本人の認識する性と別の性を表わす名前の改名を認めた事例もあります。しかし、単に個人的な感情や趣味・信仰上の都合などだけでは認められません。したがって、あなたの場合、名前が(d)の例に当たらないと、正当な事由があるとは認められないと思います。
キラキラネームというだけでは具体的な名前がわからないので助言できませんが、20年も使われ続け、イジメに遭う歳でもないことから難しそうです。仕事で笑われるのも使いようかもしれません。この許可は家庭裁判所へ申し立てることになるので、最寄りの家裁に事前相談するとよいでしょう。
なお、この他、長年通称を使い続け、戸籍上の名前を使うと、かえって周囲が混乱する場合には、通称へ改名する正当な事由があるとされた裁判例もあります。
※週刊ポスト2014年1月17日号