今年2月25日に就任1周年を迎える韓国・朴槿惠大統領。歴史認識を巡る日本への強硬姿勢、中国偏重外交で、米国はこれまでになく朴政権への不信感を強めている。その現状について、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が報告する。
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朴槿惠政権にとって新年は相当、厳しい年になりそうだ。1年目の「ご祝儀相場」も賞味期限が切れ、2年目は中身が問われる。初年度ずっと60%近くで推移した支持率も年末には48%にまで落ちた(12月21日付「朝鮮日報」掲載の韓国ギャラップ調査)。
世論調査によると「最もよくやっている」のは「外交・国際関係」で「最もよくない点」は「疎通(対話)不足」という。つまり「国内問題ではいまいちだが外交はよくやっている」というのが1年目の大方の評価だ。しかし、内外情勢ともに2014年の展望は明るくない。
特に昨年末、北朝鮮から飛び込んできた張成沢粛清の報せは不気味だ。2013年は前半の「戦争扇動」に続き、後半は血生臭い権力闘争で暮れた。朝鮮半島情勢の不透明感は一気に増した。
また、ハネムーン気分だった対中関係も、突然の「防空識別圏設定」という中国の覇権行動で冷や水を浴びせられ、朴政権の対中片思いが早くも露呈した。
朴大統領は就任以来、中国をはじめあちこちに出かけては「東アジアの安定と平和の不安要因は日本の右傾化」とぶって回ったが、この国際情勢認識がいかに的はずれであるかが明らかになった。東アジアの不安要因は、中国の軍事的膨張と北朝鮮の金正恩体制であることが確認されたのだ。
日本に対しては1年中、「右傾化」とか「軍国主義復活」「歴史不感症」などといって極端な「安倍叩き」を楽しんできたマスコミは、ただならぬ周辺情勢を背景に不安感を募らせ、朴大統領の「親中・反日路線」に異論を唱えだしている。歴史認識問題にこだわり、日韓首脳会談を拒否し続ける態度に批判が高まっているのだ。
大手新聞は一斉に首脳会談早期開催を主張し、彼女の頑なな「安倍拒否」に対しては政界・外交界からも不満と不安の声が上がっている。「日本外しの韓国外交はありえない」(大手紙論説委員)からだ。
しかし朴大統領にとって対日ハードルを下げる決断の足かせになっているのは、政治家としての「原則重視」「約束は守る」「ブレない」というこれまでの看板だ。看板にこだわって動きがとれない状態を打開するには「経済建設のため戒厳令で世論を抑えて日本との国交正常化を決断した父・朴正熙の実利・国益外交に学ぶ」(同前)しかない。
アジア太平洋で覇権を狙う中国や激変の北朝鮮情勢を見れば、日本との間で迂遠な歴史問題にこだわっている時ではない。「平壌有事」は現実味を帯びつつある。韓国はここでさらに中国に擦り寄るのか、それとも米日に立ち返るのか。朴槿惠政権にとって新年は大きな選択の岐路になる。
※SAPIO2014年2月号