昨年は「じぇじぇじぇ」「倍返し」などテレビドラマ発の流行語が席巻、今年もドラマへの注目度は高い。そこで、人気ドラマ『チーム・バチスタ4 螺鈿(らでん)迷宮』の脚本家・後藤法子氏(46)の仕事場を訪ねた。
馬好きが高じ、「ついに年間指定席まで買ってしまった!(笑い)」。競馬場へ続く散歩道。平日は人通りのない一角にジャズの流れるこの喫茶店を見つけて以来、後藤法子氏はここを仕事場の一つにする。
「私は1日7時間は寝たい眠たがり屋で、何か食べるとすぐ眠くなっちゃうんです。人目があれば寝ないだろうって、ここではクロワッサンサンドで昼食をとってから仕事をする。現在放送中の『螺鈿迷宮』も、3月公開の映画『神様のカルテ2』『ケルベロスの肖像』も、ここで書きました」
といっても、考えるのは「歩きながら」。
「大筋が何となく形になった後も、何かが足りないんですね。何が足りないんだろうと考えながら歩いて来て、『あ、これを私は観たかったんだ』と思ったものをここで書く。ちなみに『これ』はお風呂で髪を洗っている時もよく降りてきます(笑い)。
結局、自分がこのシーンだけは早く現場で見たいと思うものがないと、皆さんに『絶対観たい』と思ってもらえるドラマはできないと思う。とにかく作品が面白くなるためなら私は何度書き直しても平気ですが、この『面白い』って何なのかが人によって違う。それが一番難しいんです」
もともと一人でいるのは苦痛ではないが、周りに人がいても苦痛ではない。
「もし一人で連ドラを抱えていたら、とっくに心か体を病んでいたと思う。その点は、私の仕事の進行具合を察知して、食事を買ってきてくれたり、愚痴を聞いてくれたりする、結婚20年になる夫に感謝です」
■後藤法子(ごとう・のりこ):1967年福島県生まれ。小劇団や自主映画の裏方を経て、2000年『バカヤロー!2000』で本格デビュー。代表作に『ブラックジャックによろしく』『曲がり角の彼女』『チーム・バチスタ』シリーズ、『ご縁ハンター』『遺恨あり 明治十三年最後の仇討』『都市伝説の女』、映画『神様のカルテ』等。
取材・文■橋本紀子
※週刊ポスト2014年1月24日号