年末・年始は、お笑い芸人の漫才やコントが連日テレビで放映されていたが、かつて『ツービート』でお笑い界を席巻したビートたけし氏は、今の若手芸人たちの漫才をどう評価しているのだろうか。著書『ヒンシュクの達人』(小学館新書)の中で、詳しく語っている。
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お世辞や謙遜でもなんでもなくて、正直オイラが漫才をバリバリやってた時代より、今の若手の実力あるヤツラの漫才のほうが、絶対面白いと思うよ。そういうヤツラに上から目線で物申すのは、カンベンだぜってね。それに同じ漫才でも、オイラがやってた頃のものと今のものじゃ、ゼンゼン「質」が違うんだよな。
まず「尺」が違うからね。オイラの時代の漫才は、テレビでは7分程度、寄席やストリップ小屋の舞台じゃ15分はやってたんだよ。だけど今のお笑い番組を見てると、ネタは大体4~5分にまとまってるよな。だから、やり方もまったく違ってくるんだよ。
オイラの頃は、テレビにしても舞台にしても、漫才を始めながら客の顔を見て場の空気を読んで、前振りやスジ振りをしっかりやって、余計な脱線を挟んで温めていって、ってことをステージの上でやってたわけ。だから客のほうも聞いてるうちにジワジワ面白くなってくるし、芸人のほうもドンドン乗ってくるっていう「流れ」が大事だったんだよ。
だけど、今の芸人にはそんな時間が与えられてないわけでさ。余計なものを全部削ぎ落として、次から次にドンドン「オチ」を繰り出していかないとダメなんだよ。
昔の漫才と今の漫才の違いってのは、まさしく「レコード」と「iPod」の違いだよな。オイラの頃はレコード針をレコードの上に落としたりするプロセスから、「プチプチッ」ていうノイズまで「味」だって言って楽しんでたわけだけど、今の漫才はアルバムの中でも余計な曲は外して、好きなものだけ抽出して、ピンポイントで取り出してるっていうことだよ。
まァ、芸のレベルは上がったけど、アナログ的な味はなくなっちゃったよね。そっちのほうが面白くてウケるからそういう流れになってるわけで、今さらジジイがとやかく言うことじゃないけどさ。
※ビートたけし/著『ヒンシュクの達人』(小学館新書)より