「大人は、絶対笑わないよ」「アレが面白いのかな~と思ったもん。わかんねぇ~」──。公共の電波で痛烈なダメ出しを繰り返したのは、コメディアンとしては超ベテランの志村けん。1月4日に放送されたラジオ番組『志村けんの虫の夜』(TBSラジオ)の冒頭場面でのことである。
志村が酷評した相手とは、日本で最も面白い若手漫才師を決めるコンテスト『THE MANZAI』(フジテレビ系)で、昨年12月に2013年王者に輝いたお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の2人。
「2008年に結成されたコンビで、テンポや勢いを大切にしながらボケの村本大輔が高速でしゃべり倒し、相方の中川パラダイスを貶す漫才が持ち味です。しゃべくり漫才といわれる関西系の漫才の系譜を受け継いでいるため、引退した島田紳助ら、関西の漫才師にウケが良く、若者の間でもファンが増えています」(芸能評論家の三杉武氏)
優勝後は仕事が一気に増え、2月末まで予定が埋まっているというお笑い界のニューホープ。そんな彼らに対して、「早口で何をいっているのかわからない」と、志村はその芸風を真っ向から批判したのである。
「一方的に早口でまくしたてる漫才なので、生粋のコント職人で“笑いを作り込む”タイプの志村さんからすると、ただ勢いだけという風に映り、芸の薄っぺらさを感じたのかもしれません」(前出・三杉氏)
さらに、志村の批判の矛先は2人を優勝させた番組そのものにまで。「びっくりした。アレが優勝したとなると、もうターゲットは中高生だけだな」と辛辣に語った。
しかし、この『THE MANZAI』の優勝争いについて、“若手漫才師にとっての登竜門”たるべきシビアさに欠けているのではないかと感じている人は少なくないようだ。TVコラムニストの桧山珠美氏はこう分析する。
「2010年まで放送されていた『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)は、芸歴10年未満のグループのみが出場可能だったため、『今年がラストチャンスだからどうしても優勝したい』という気迫が見られ、見ている方もハラハラさせられたが、出場制限がない『THE MANZAI』は緊張感に欠ける部分がある。
漫才ナンバーワンを決める純粋なコンテストではなく、どちらかというとコンテスト形式のバラエティのように感じられるつまらないところは確かにあります」
※週刊ポスト2014年1月24日号