「軍艦ブーム」のいま、多くのファンが港を訪れ、その雄姿を一目見ようとしている。評論家の金美鈴氏と大和ミュージアム館長の戸高一成氏が、最高の軍艦として選んだのは、排水量65000トン、全長263メートル、全幅38.9メートルで46センチ3連装砲3基などを装備した、世界一の戦艦「大和(やまと)」である。
日本海軍の秘密兵器として建造された世界最大の戦艦。しかし、時代は航空戦中心となっていたため、なかなか出番に恵まれず、レイテ沖海戦でわずかに活躍した後、坊ノ岬沖海戦で多数の米軍機と交戦し、2時間に及ぶ集中爆撃を浴びて海底に沈んだ。
「明治維新から約60年で世界最大の戦艦を造った日本の技術革新を象徴する艦艇です。珠玉の戦艦を無謀な特攻で失うという悲劇的な結末が、戦後70年近く経っても多くの国民の心に『最高の戦艦』として生き続ける要因でしょう。すでに軍事面において、戦艦の時代は遠く過ぎ去っていました。ゆえに逆説的ですが、『大和』は未来永劫、世界一の戦艦であり続けるのです」(戸高氏)
太平洋戦争中には軍内部でも性能が秘匿されていたため、その存在が国民にほとんど知られていなかった「大和」だったが、戦後には度々映画やアニメなどのモチーフとされるなど、今なお日本人の魂を揺さぶり続けている。
「呉市の『大和ミュージアム』で10分の1スケールの模型を見たとき、あまりの美しさに嘆息しました。ただただ美しかった。『大和』は当時の科学技術の結晶であり、日本が誇るモノ造りの最高到達点です。国を挙げて建造した巨大戦艦でしたが、戦場の主役は航空機に変わりつつありました。時代の流れに取り残されながら、果敢に前進をやめない悲哀が『大和』にはあります」(金氏)
※週刊ポスト2014年1月24日号