1月3日、3年間に及ぶがんとの闘いに力尽き、この世を去ったやしきたかじん(享年64)。その人徳は芸能界のみならず、夜の街にも広く知られていた。こんな逸話がある。「喝采」「北酒場」などの名曲を作曲した中村泰士氏は、3年ほど前、たかじんと北新地の路上でバッタリ会った。
2人はその時が初対面。にもかかわらず、たかじんは、「先生にはお世話になった。一緒に飲みましょう」と誘ったのだ。
「一瞬、何のことかわからなかった。そしたら彼はこういうんです。“自分が売れてへん頃、京都の祇園で弾き語りをやって食いつないでいた。その時によく歌っとったんが、先生の『今は幸せかい』という曲やった。本当にありがたいことです”と。
それから彼は目に涙を浮かべながら、僕の作った歌を歌ってくれた。豪放磊落とか毒舌とかいわれているけど、本当はもの凄く繊細な心を持ってる男やと感じました」(中村氏)
※週刊ポスト2014年1月24日号