サントリーホールディングス(HD)が、米大手のスピリッツ(蒸留酒)メーカーである「ビーム社」を総額160億ドル(約1兆6500億円)で買収すると発表した。
この大型M&Aにより、サントリーは一気に世界3位のスピリッツメーカーに躍り出ることになるが、そこで注目されているのが輸入ウイスキー市場の盛り上がりである。
実はサントリーのビーム社買収には伏線があった。経済誌記者が語る。
「もともとビーム社の著名ブランドだったバーボンウイスキー、『ジムビーム』の日本での販売権はアサヒビールが握っていました。一方のサントリーは40年以上、米ブラウンフォーマン社の『ジャックダニエル』や『アーリータイムズ』などを代理販売してきました。
ところが、サントリーはブラウン社との販売契約が切れたことや、営業戦略の違いなどを理由に、昨年1月に販売元をアサヒと“交換”したのです。輸入ウイスキーの中で一番売れている『ジャックダニエル』は手放したものの、ビーム社との提携を強化してきた結果、『ジムビーム』の年間販売量は前年比で7倍近くになる見込みです」
ハイボールブームを仕掛けて低迷するウイスキー消費の拡大に貢献したサントリーだけに、「トウモロコシが原料のため、国産よりも甘みが強い」(都内のバー店主)と言われる米国産バーボンの飲み方提案を次々と打ち出し、まだウイスキーに馴染みのない若者の愛飲者も増やしたい考えだ。
昨年6月、大阪市にお目見えしたサントリーグループ運営の「ザ・エイジングハウス1795」では、すでに『ジムビーム』をベース使った飲みやすいカクテル類が人気。来店客の多くは40代後半に多いと言われる“バーボン世代”の男性ではなく、若い女性たちだという。
サントリー、アサヒという国内の2大メーカーの販売合戦も奏功し、ウイスキー市場は伸び続けている。国税庁がまとめた2012年の課税・通関ベースのウイスキー市場動向によると、2012年は前年比2.6%増の9万8574キロリットルで4年連続プラス。中でも輸入数量は堅調で、2013年1~9月は前年比11%増を記録した。